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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Got Part -神の一部- 六話up ( No.54 )
- 日時: 2010/06/13 19:28
- 名前: 輝咲 (ID: eHFPH3xo)
●1章 part八
時が夕暮れを告げた。西の空が赤く染まりだす。
湖の近くの森の茂みに降り立つ。そこから歩いて湖に行く。
その時にはもう、左眼の痛みは治まっていた。
ガサッ……
「……!!」
後ろの方から草が揺れる音がした。零衣は咄嗟に後ろに振り向く。
「誰もいない……」
零衣の言う通り、そこには誰もいなかった。
しばらくそこに立っていたが、何も音がしない。
急に寒気がした。そう、あの男の者が言った言葉が蘇ったのだ。
『湖の近くに鬼が潜んでいるかもしれない』と……。
「鬼」と聞いて早速ここまで着たが、出会ってしまえばそこで終わり。今、武器を持っていない零衣は誰とも戦えない。
頑張れば素手でも戦えるが、相手が「鬼」となれば話は別。秒殺されるだろう。
そんな状況では無理だ。来た方が馬鹿だった。
ガサッ……ガササッ……
音がどんどん近づいてくる。しかし、者影が視えない。空気が重々しい。
(どうする自分……?)
緊張して汗が頬に流れる。現状を維持するのが辛い。心臓の鼓動が速くなる。考えている暇などなかった。
零衣は湖に向かって走り出す。
後ろにいた者影も驚いた様子だ。その者影も零衣を追いかける。
(よし、引っかかった。)
考えた作戦が成功したのだ。このまま湖まで引き連れて、正体を暴く。そんな作戦だった。
つい、笑ってしまう。こんな単純な罠に引っかかるなんて。「鬼」族のくせに、とんだ馬鹿だな。
零衣はそのまま、湖へと向かった。
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