ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Got Part -神の一部- 拾話up ( No.80 )
- 日時: 2010/06/27 19:25
- 名前: 輝咲 (ID: 3NeFJuEp)
●1章 part拾壱
「まぁ、こんな暗い話をしてたって、何も変わらないしな。そろそろ飯食うか。」
「うん……。」
零衣が返事をすると、はりきった様子で遊衣は台所へ向かった。零衣は靴を脱ぎ、トコトコとついて行く。
家は木造造りの一階建て。大きなイメージがあるだろうが、結構小さい家。因みに食卓のところは4畳ぐらいしかない。
零衣は先に席に座り、ご飯が来るのを待つ。
台所から遊衣が鍋を持って現れた。
「今日はクリームシチューだ。」
「やった!」
鍋が机に置かれる。湯気が沢山噴いていて熱そうだ。
とても美味しそうな匂いが鼻を刺激して、食欲を出してくれる。
零衣は遊衣が作ってくれたクリームシチューが好きだ。特に特別な味付けはしていないが、普通に美味しい。
遊衣がお皿にシチューを入れてくれる。
「熱いから気をつけろよ。」
「うん!!」
零衣は皿が置かれると同時に、シチューを食べにかかる。ちゃんと、フーフーと冷ましながら食べる。
「どうだ? 美味いか?」
遊衣も自分が食べるシチューを皿に入れ、足を組んで席に座る。
「うん! 最高!」
笑顔でスプーンを持った手で、グッドマークを作る。
「そうか……なら良かった。」
遊衣も笑顔で答える。嬉しそうだ。しかし、少し様子がおかしかった。何か言いたそうだった。
「どうしたの姉さん?」
シチューを食べるのをやめる。やっぱり気になったので聞いてみる。
「あ〜いや。ちょっと迷っててな。」
遊衣もスプーンをとめて話す。また、髪をボサボサと触る。
「何が?」
「私が実家に帰っている間、御前をどうするかだよ。いいところがあるんだがな、そこはちょっと危ないし、だからと言ってこのままほっておくのも危ないし。」
「ん〜……。」と言いながら、頬杖をつく。
真剣に迷っているようだった。
「別にいいよ。その『危ない場所』でも。だって、自分はもう14歳だし。危なくなったら逃げればいいしさ。」
別に気は使っていないつもりで言った。ある程度の場所なら生きていける。
遊衣はそれを察したのか、決心をしたようだ。
「零衣がそう言うならいいか。じゃ、今からそこに連絡するよ。シチューを食って待ってろ。」
「わかった。」
遊衣は席から立ち上がり、奥にある自分の部屋へと行った。
零衣は遊衣に言われたとおりに、シチューを食べて待つことにする。
ふと食卓にある窓から空を見る。空は薄っすら紅く染まっていた。
もう夕日が沈んでいるのに、紅いなんて可笑しかった。
何故か、零衣にはそれがとても不吉に感じた。
