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Re: Got Part -神の一部-  拾弐話up ( No.84 )
日時: 2010/07/11 19:04
名前: 輝咲 ◆7kKwdRQzyk (ID: X4TSREzO)

●1章 part拾参

焼き焦げた臭いが鼻と喉を刺激する。乾いた空気が喉をカラカラにさせる。目も霞んでくる。

(何で……? 姉さんを連れて帰るんだったら、こんな事までしなくてもいいのに……。)

そう、此処はまるで、「戦場」だった。
関係のない者が無差別に殺されている。
それを只呆然と見せられ、抵抗のできない弱者。隠れてその場を過ごすだけ。

強い者は卑怯だ。と零衣は心の中で恨む。
弱い者からありったけの金や貴重品を吸い取って、その後はハエのように殺し、そして棄てる。
本当に卑怯だ。今の自分が弱くて、悔しい。

「キャー!」

(——!)

近くからだろうか? 若い女の叫び声が聴こえた。鬼に襲われているかもしれない。
零衣は辺りに武器になりそうな物を探す。
運が良いのか、家の扉の淵辺りに、訓練用に使っている木刀が立てかけられていた。
それを持って、声がした場所まで走る。

(多分、此の辺りの筈……。)

村の広場まで来た零衣は足を止め、急いで辺りを見渡す。
ふと視界に、1者の女性が子供を抱えてしゃがみ込んでいるのが入った。頭から出血している。
子供はビクビク脅えながら、女性に抱きついていた。
女性の前には男の鬼が棍棒を持って立っている。棍棒に少しだけだが、血が付いている。
この鬼が女性を殴ったのだろう。どう見ても、弱い者虐めにしか見えない。
見てると腹が立ってくる。零衣は木刀を構え、鬼の元へと駆ける。

「何っ!?」

零衣の存在を気づいた鬼。咄嗟に棍棒を構える。
それでも、零衣は鬼に殴りかかった。

ゴン!

木と木がぶつかる音が広場に響いた。
急に現れた少女に女性は驚いている。女性はその光景に唖然としていた。

「大丈夫ですか?」

零衣は女性に声をかける。そして、背中を見せ、女性の前に立ちはだかった。

「あっ……はい……。」

まだ、女性は驚いている様子だった。
まぁ、無理もない。ピンチなところを助けられたのだから。

「てめぇ! 何しやが——!! って! 御前まさか……!?」

「……?」

男は零衣を知っているらしい。口をポカンと開けている。
勿論、零衣はその男は知らない。
多分、遊衣の妹という理由で男は知っているのだろう。
それにしては、驚き方が酷い。

「自分に何か用でもあるんですか?」

少し気になったので聞いてみる。
意外な答えが返ってきた。

「と、とある者からの依頼であったんだよ。『零衣を殺せ。』とな。悪いが、御前には死んでもらう。」

話が終わると同時に、男が棍棒を勢い良く上から振るう。

「はぁ……!?」

まだ、整理ができていない脳で体を動かす。自然に体が横に避ける。
下りてきた棍棒が深く地面を抉る。土が飛び散る。
少しだけだが、バランスを崩れた気がした。

「おらぁ!」

「なっ!?」

体勢を立て直すかと思ったら、そのままの体勢で棍棒を横に思い切り振った。
急いで木刀を構えたが、間に合わない。

ドン!

「うっ……!」

できるだけ体を庇ったが、無意味だった。
後ろへ吹き飛ばされた零衣は、近くの家に激突した。
背中を強打したせいで、体が痺れて動かない。
意識まで、遠くなっていった。