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Re: Got Part -神の一部-  拾弐話up ( No.88 )
日時: 2010/07/18 21:57
名前: 輝咲 ◆7kKwdRQzyk (ID: DxRBq1FF)

●1章 part拾伍


(何をしているんだ!? 自分は!)

涙が零れそうにになる。
初めてだった。者を殺したのは。
感覚なんて覚えてないのに、手を見ると震えが止まらない。
此の事を遊衣が知ったらどうなるだろう?
悲しんで怒るだろうか? それとも、「よくやった。」と励ましてくれるだろうか?
どっちにしろ、『怖い』。

「ハァ……ハァ……。姉さんを探さないと。んで、この村から脱出しないと。危なすぎる。」

全力で走ったせいか、頬から汗が垂れてくる。
手の甲でそれを拭う。しばらくすると、また汗が垂れてきた。
もう、めんどくさいのでほっておく。

「君……! 確か!」

汗を拭っていると、背後から聞き覚えのある、女の者の声がした。
振り向くと、そこには湖で出会った女の者が立っていた。
出会った時と同じ格好をしている。勿論、手にはあの黒味かかった長刀を持っている。

「——! あなたは湖の時の……!」

零衣は驚くことしかできなかった。
走って息が苦しいのに、驚きのせいで、また呼吸が早くなる。
頑張って息を整えようとするが、意外と難しい。

「だ、大丈夫?」

息苦しいのに気がついたのだろう。心配をしてくれた。零衣に近寄って、背中を擦ってくれる。
女の者が擦ってくれた御陰で、やっと呼吸が治まった。

「あ、ありがとうございました。では……。」

零衣は軽く御辞儀をして、此の場から去ろうとした。
一刻も早く、遊衣に会って村から逃げたかった。

「あ……! ちょっと待って!」

女の者が焦って零衣の肩を掴む。

「何ですか?」

「私もついて行っていい? 迷子になっちゃって。」

「え?」

予想外の質問で、すぐに答えが返せなかった。
てか、この歳で迷子って……。

「いいですけど……。」

「やったぁ!」

笑顔で零衣に抱きついてくる。
少し暑苦しいが、我慢して受けとめる。

「これから何処に行くの?」

「えっと……姉さんのところです。何処にいるかはわかりませんが。」

「じゃ、君の姉さんも迷子だね。」

「ですね。」

零衣は適当に相槌を打っておく。
遊衣が迷子になるわけがないし、どこかで零衣を待っている筈。
本当に何処にいるかはわからないが、動き回れば、何時かは出会うだろう。
もし、鬼が襲ってきても、女の者がいる。
零衣と女の者は遊衣を探す為に歩きだした。