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- Re: Got Part -神の一部- 拾弐話up ( No.92 )
- 日時: 2010/07/25 22:49
- 名前: 輝咲 ◆7kKwdRQzyk (ID: .pwG6i3H)
●1章 part拾七
ドカァァァァァン!!
零衣の頭上の空から、有り得ない程の大きい眩い光の筒が零衣を包んだ。
周りの土や落ち葉が吹き飛ぶ。
「———!!」
遊衣と鼎は同時にその光に反応した。
光のせいで、ここからは零衣が見えない。
仕方ないので、このまま状況を見届ける。
光の中で零衣は次々と力が溢れかえるのが分かった。
風で眼帯がとれ、イヤリングで閉ざされた左眼が現れる。
今度はイヤリングが砕け、眼が開かれる。
瞳の模様が右眼とは違っていた。
そう。さっき、手にした銀色の十字架が写されていたのだ。
しかし、左眼の視界はぼやけていた。
と言うより、右眼との風景と重なり、沢山の色が視える。
『どう? この力を手に入れて? まぁ、少し「代償」はあったけど。』
「あぁ……最高だ。それに、変なムラムラも消えた。」
何故か、自分の口調が変わっていた。でも、違和感が全くない。
簡単に言えば、『何も感じない』。
『そう。なら良かった。じゃ、頑張ってね。』
その言葉を告げると同時に、女の声と光の筒は消え去った。
目の前には遊衣と鼎が視える。
2者とも、驚きの顔をしいる。
「鼎……気をつけろ。最悪な状況になった。無理はするなよ。」
「わかりました。」
2者はまた、武器を深く構え直した。
その瞬間、遊衣が駆け出した。
阿修羅を零衣の腹に向かって、水平に振るう。
零衣はその攻撃がスローに視えた。後ろに軽く飛び避ける。
「やっぱりか……。」
遊衣はこの攻撃が避けられるのがわかっていた様子だった。兎に角、零衣との間を空ける。
しかし、零衣はそれを見逃さない。距離が空くと同時に、間を詰める。
「鼎!」
遊衣が叫ぶと、間に鼎が現れた。
長刀を構え、突き刺すように刺してくる。
その攻撃もちゃんと、スローに視えたが、攻撃を避けることは出来なかった。
ザクッ。
左肩に長刀が掠めた。出血するが、意外に傷は浅かった。
鼎は次の攻撃の体勢に構えるが、流石にこのまま突っ込むと危ない為、一度身を引く。
武器がない零衣にとっては戦闘は不利だった。
急いで辺りを視て、武器になりそうな物を探す。
左眼から瓦礫の下に御手ごろな斧があるのが視える。
そこまで一気に駆け出し、瓦礫の中に手を突っ込む。
手を引くと、斧がちゃんと掴まれていた。
こんな武器は使ったことがないが、今は我が儘を言っていられない。
軽く上に放り投げ、回転させる。そして、斧を鼎に向かって投げる。
「——! なっ!」
考えてもいなかった行動に、鼎は反応が遅れる。
一応、長刀を振り、斧を下に落とした。
しかし、次の行動にはさすがについて来れなかった。
零衣は思い切り地面を踏み切り、鼎の元まで突っ込む。
そして、右肘を鼎のこめかみに叩き込んだ。
鈍い音が響くと同時に、鼎は気を失い倒れた。
「——!! 鼎——!! ……御前いい加減にしろ!」
今度は遊衣が大きく吼えた。
少し大きな犬歯をむき出しにしながら。
「てめえもいい加減にしろよ。散々、私の心情を振り回しといてさ。」
零衣も反論する。『今』はどうでもいいのだが、『前』の自分が許さない。
それが無くなるまで言い返すつもりだった。
「知るか、そんなもん! 御前が勝手な思い過ごしをしてるからだろうが! 好きで御前の子育てをしてたわけじゃないんだ! 仕方なくやってたんだよ!」
「ふ〜ん……そうなんだ。——なら、そんな奴……殺してもいいよな? 自己中的な野郎は。」
光を失ったような目つきで遊衣を睨みつけた。
頭の中では、『殺』の言葉しか考えれない。
血祭りにして、手を遊衣の血で染めたい。
そんな狂った欲望しか考えれない。
「——! 殺れるもんなら『殺ってみな!』」
怒りで狂った遊衣がこっちに全力で襲ってくる。
両手で構え、大きく縦に振った阿修羅を、零衣は落ち着いて『視て』横に回避する。
外れた攻撃の隙を逃さず、右拳で遊衣の顔面を殴る。
しかし、すぐに体勢を立て直した遊衣が阿修羅で右拳を防ぐ。
ガン……
阿修羅の刃と零衣の拳がぶつかった音が地味にお互いの手に響いた。
遊衣は念の為か、零衣との距離を空ける。
阿修羅には何も問題は無かったが、零衣の拳に問題が発生。
皮膚が切れ、骨が剥き出しになり、血が溢れかえった。
別に遊衣が刃を立てはわけじゃなかった。零衣の力加減を計りミスったのだ。
ツタツタと血が流れていても、零衣は何も思わない。
と言うより、痛みが感じれらない。
『何も感じないでしょ?』
女の声が頭に響く。その声が何故か、嬉しそうに聴こえた気がした。
零衣はあえて、その問いを無視した。闘いに集中したい。
しかし、女の声はそれを許さなかった。また、話しかけてくる。
『どう? 痛い? 苦しい? 怖い? それとも——』
「煩い!」
女の声の話を遮るように、零衣は怒鳴った。
驚いたのか、少し言葉に詰まっていた。
ふと、零衣は試しに、左眼で遊衣を見つめてみた。
真っ黒な炎が胸辺りで燃えている。
あぁ……あれは。
『心情』を表す炎だった。
何を感じているのか分からないが、炎の正体は大体の予想はつく。
今度は自分の胸辺りを見てみる。しかし……。
何も無い。炎が燃えていない。
「何でだ……?」
