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Re: Got Part -神の一部-  拾弐話up ( No.101 )
日時: 2010/08/02 17:25
名前: 輝咲 ◆7kKwdRQzyk (ID: lXr5zlAd)

●1章 part拾九


零衣と遊衣は同時に、その音と声がした方を見た。
黒いレディーズーツを着た、長身で茶髪のセミロング。額には包帯が巻かれていた。
そして、銃を撃ったのはその隣にいた、もう1者の女だった。包帯を巻いた女と同じく、黒のスーツを着ている。身長は包帯の女より少し小さく、黒髪のショートカットだった。年齢は2者とも、20はありそうだ。
遊衣はその女の者達を見て、酷く驚いていた。
伸ばした手が固まっているほどに。

「何故此処にいる? そして、何故分かった? 私が此処にいるのを。」

驚いたのは一瞬だけだったのか、いつもどおりに口調は落ち着いていた。
遊衣はゆっくり起き上がり、女の者達を睨みつける。
そんなことをされても、動揺することもなく、包帯の女は静かに口を開いた。

「そんなの決まってる。『神』から教えてもらったんだ。忘れたのか? 私の『能力』を。」

包帯の女は自信の笑みを浮かべた。
それを見て、遊衣は眉を歪める。

「そんなことまでできるなんてな。やっぱり、あんたは『危険』すぎる。離れて正解だった。」

包帯の女の悪口を言われて腹が立ったのか、隣にいた女が拳銃を構えた。
しかし、包帯の女が腕を伸ばして拳銃を下ろさせる。
零衣には上司と部下の関係っぽくみえた。
あまり目立たないように、零衣は起き上がる。

「私も……御前みたいな『自己中』な奴を捨てて良かった。会社に悪いイメージがつくからな。」

話の内容を聴いていて、遊衣と包帯女は特別な仲に思える。
首は突っ込まないが、被害を受けている側からにしては疑問に思う。

「捨てたんならほっといてくれ。私にも予定があるんでね。」

「それはできない。御前の妹の零衣に用があるんだ。コイツを頂く。」

「零衣」と見知らぬ者に呼ばれ、鳥肌がたった。
——何故、私の名を知っているんだ?
それより、「頂く」って。
怪盗野郎かよ。——と自分でツッコむ。

「あっそ。なら、先に零衣を殺してから、後であんたを殺すよ。」

そう言うと、遊衣は素早く零衣の方を向き、またまた強烈なハイキックを炸裂させた。
急な攻撃に反応できず、攻撃を食らってしまった。
一応、両手で防いだが、あまり意味はなかった。
近くにあった蔵に衝突し、零衣は踏ん張り、意識を保たせる。今にも、意識が飛びそうになる。

「今度はあんただ。覚悟しろ。」

「殺れるのか? たったの1者で。」

「あぁ。もう1者いるんでな。——鼎!」

遊衣が叫ぶと、どこからか鼎の姿が見えた。
一見、苦しそうに見えたが、戦闘には問題なさそうだった。

「すみません。気絶してしまいました。」

「別にいい。それより、こいつ等を殺る。手伝え。」

「承知。」

遊衣は素手で闘い、鼎は長刀で闘う。
お互いに構え、様子を窺った。

「仕方ない。殺るぞ。」

「了解。」

拳銃を持った女が、包帯の女を庇うように前へ出る。
包帯の女は胸から、武器を取り出す。
青色の洋風な槍が出てくる。大体、2メートルほどの長さ。先端のところだけに刃がついている。兵士などが使いそうな槍だった。

「——これで終わりにしたい。」

包帯女が呟くと、遊衣達が攻撃を仕掛けてきた。


キィン。キィン。
金属が擦れあう音が耳に響く。
多分、遊衣と包帯女が闘っているんだろう。
——今日は有り得ないことが起こりすぎだ。
鬼が村に攻めてくるし、遊衣には裏切られるし、変な女の声が聴こえるし、おかしい能力が発動するし、胸に穴が開いたような気もするし、今なんて自分の命を巡った闘いをやってるし——災難すぎで頭が狂いそうになる。

『仕方ないよ。それが君の運命だから。』

もういい加減にしてほしい。
女の声が聴こえだしてから、自分の周りは狂いだした。
御前のせいで、御前のせいで。
——世界が狂ったんだ。

「御前のせいだぁぁぁ!!!」

頭を両手で抱え、胸の中では叫ばず、声にして叫んだ。
ついに体力の限界がきたのか。
零衣は意識を完全に失った。


         〜1章END〜