ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Got Part -神の一部-   ( No.108 )
日時: 2010/08/02 17:28
名前: 輝咲 ◆7kKwdRQzyk (ID: lXr5zlAd)

●2章 part壱


私——零衣は夢らしきものを見た。

小さい頃の私が泣いている。
煉瓦造りの家と家の間の小さな裏路地で泣いている。
私の周りには青年達——5者ぐらいが私を囲んでいる。
口々に何か文句を言っているようだが、聴こえない。
私は只、脅えているみたいだった。
そんな腐った空気の中に、1者の小さな(私と同じぐらい)女の子が現れた。
右手には身長に合わない大きな黒い鎌を片手で持ち、左手には人形が大切そうに抱かれている。
私と同じく、左眼に眼帯をしていて、黒い大きめのフード付きのパーカーを着ている。
今度はその女の子に文句を言っているようだった。
そんなことを気にする様子もなく、近寄ってきた1者に向かって、黒い鎌を振った。

グシャァァー。

首が高く跳ね、地面にボトリと落ちる。目は開いたままで、驚いた表情だった。
切断部分からは、噴水のように血が飛び散った。斬られた青年の体はバランスを崩し、横に倒れた。
空気は一瞬で、寒くなった。
その光景を見ていた他の青年達は、一気に悪寒を感じたらしい。表情と体が硬直している。
そんなのお構いなしに、次々と女の子は首を跳ねていく。子供とは思えないほどの動きだった。
女の子が現れてからあっという間に、青年達は首を無くし死んだ。辺りは死体と血だけだった。
私はこの時、この女の子を『救世主』と思ったのか、感動して涙を流していた。
その救世主が私に近寄ってくる。

「泣かないで。」

私の頭に救世主の手が乗せられた。
私と同い年ぐらいなのに、ずっと大きく見える。

ぎゅるるぅ〜。

次は私の腹の虫が鳴いた。
救世主は笑って、ズボンのポケットから板チョコを取り出し、私の手をとって掌に置いてくれた。

「チョコって、血の味がするんだって。だから、食べ過ぎると鼻から沢山血が出るんだ。知ってた?」

救世主は悪戯っぽく笑ってそう言った。
小さかった私はこの事を本気にしたらしい。
また私は泣き出した。

「あははっ。嘘だって。」

嘘だったみたいだった。
それでも、私はまだ泣いている。
救世主は何かを察知したのか、急に慌てた様子になった。

「あっ……ゴメン。僕、そろそろ行かなくちゃ。」

この人、自分のこと「僕」って言ってる。
男なのか? とその時思ったのか、疑問符を浮かべている。
黒い鎌についた血を振り払い、体内にそっとしまう。

「じゃあね、君。もう此処等辺には行っちゃ駄目だよ? 又怖い奴に襲われるから。」

私はうんと首を縦に振る。
それを見て、笑顔で私に手を振りながら、此処から走って行った。
私は救世主から貰ったチョコを見つめた。

ぎゅるるぅぅぅ〜。

今度は大きく腹の虫が鳴いた。
嘘とは言え、あの話が本当だとしたら……。
喉唾を鳴らすと、食べる決心をした。
包まれた洋紙を千切って、少し戸惑ってからがぶりつく。

「……。」

ボリボリとチョコを噛み砕く音が響く。
血の味はしない。
しかし——この味は何だ?
分からない。チョコの味だけ『感じられない』。

チョコを食べ終わる前に、この夢から覚めた。