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Re: Got Part -神の一部-  拾弐話up ( No.109 )
日時: 2010/08/08 13:13
名前: 輝咲 ◆7kKwdRQzyk (ID: 07AVqLKH)

●2章 part弐


重い瞼を開ければ、見たことのない木造の天井が見える。
零衣はベットで寝かされていた。下着にタンクトップ1枚で、所々に包帯が巻かれている。
ついさっきまで、昔の記憶らしき夢を見て、頭がものすごく重い。
脳裏にあの夢の映像が映る。見覚えのないあの女の子にあのチョコの味。
とても気分が悪かった。
体を起こすと、部屋のドアが開いた。

「やっと起きたか。」

村で会った、額に包帯をつけてる女が部屋に入ってきた。
もう1者の拳銃を持ってた女の者ないない。
また、出会った時と同じスーツを着ている。

「此処はどこだ? 何でこんなとこに? で、あんたは誰だ?」

出会って早々、少し掠れた声で包帯の女に質問をぶつける。

「おいおい……沢山の質問だな。……私は時鳴 呉阿。此処は私の会社で、ちょっとした裏会社だ。で、この部屋は社員が使う空き部屋。——そして、御前は村の廃屋で気絶していた。そこを私がここに連れて来たんだ。」

近くにあったパイプ椅子に腰をかけて、足を組む。

「——!」

零衣は思い出した。——遊衣に負けたことを。
無事命は助かったが、包帯の女が来ていなかったら、
間違いなく『死んでいた』。

「——そういえば、あんた姉さんと闘ってたよな。姉さんは死んだのか?」

「いや……殺し損ねた。正確には逃げられた。後少しだったんだがな。」

少し悔しそうに包帯の女は天井を見上げた。

「そうか……。後もう1つ聞きたいことがある。」

「次は何だ?」

包帯の女は疲れたのか、足を組み直した。

「さっき裏会社とか言ったな? そんな会社が私を助けた?」

「単純に、御前にこの会社の社員になってもらうためだ。」

「はぁ?」

よくわからない答えが返ってきて、零衣は返事に戸惑ってしまう。

「訳わかんねぇんだけど。何で、私みたいな歳で社員にならねぇといけないんだ?」

確かに、14歳の子供が裏会社なんかに、入社なんて。
本当に世界が狂ったようだった。

「だからこそだ。御前ぐらいの歳がこの会社にピッタリなんだ。まぁ、その他に特別な理由があるんだがな。」

「特別な理由だと?」

零衣は眉を歪める。
心臓の鼓動が早くなった気がした。

「御前の左眼の能力さ。」

「——!!」

反射的に零衣は左眼に触れる。
いつもと同じ眼帯をしていた。
眼帯の下から指を伸ばし、確認する。
当初と同じく、イヤリングで閉ざされていた。

「これに何か特別なことがあんのか?」

「とても珍しい能力だ。まぁ、その話はまた今度だ。話を変えるが、御前に会わせたい者がいるんだが……そいつが今、買出しに行っててな。まだ返ってこないんだ。そこで、そいつを御前の能力で探してほしい。」

「はぁ? 何で私が探さねぇといけなんだよ。」

不機嫌そうな顔で零衣は反論した。
無論、本音は「面倒だから」。

「この街は大きくて、探そうにも探せないんだ。それに、早く御前に会わせたいんだよ。だから。」

呉阿は椅子から立ち上がると、壁にかけてあった黒いビニールの袋が被せている物体を取った。
ビニールにはチャックがついていて、それを呉阿は開ける。
そこから、黒色と赤色がメインのブレザーが見えた。
袋を完全に開けて、服を零衣に投げる。

「何コレ?」

それを受け取ったが、どうしたらいいのか分からない。
ブレザーの他に、白色のYシャツに、赤色のネクタイ、後は黒色のズボンがあった。

「とある学校の制服だ。それを着て、街を歩くといい。御前が着ていた服はボロボロだったから、こっちで処理した。——それから。」

呉阿は少し間を空けてから、再び話を続ける。

「探してほしい者の特徴なんだが——その能力を使えば必ず分かる。保障する。」

「それじゃ。」と別れの挨拶をして、呉阿は部屋から出て行った。
部屋には零衣だけになった。

「はぁ〜……。」

零衣はもう溜め息しか溢せなかった。
渡された制服を着て、この部屋から出て行く。