ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Got Part -神の一部-  拾弐話up ( No.110 )
日時: 2010/08/08 21:03
名前: 輝咲 ◆7kKwdRQzyk (ID: wV8NmXkW)

●2章 part参

血をイメージさせる様な赤い絨毯の上を歩く。
一直線に廊下が続いている。
運が良かったのか、者は誰もいなかった。
靴は部屋の入り口の隣にあった、高価そうな皮靴を使わせてもらった。

(それにしても……。)

灯りがない薄暗い廊下を歩いていて、者の気配が全然ない。
会社といえば、もっと社員がドタバタと慌てているイメージが強かったんだが——。
この会社は静かすぎる会社だな——と零衣は少し呆れた。
そんなどうでもいい事を考えていると、ロビー的な場所に出てきた。
廊下よりかは明るかったが、やっぱりまだ暗い。
大理石でロビー全体は出来ていた。床や壁は鏡のように光っている。
ダンスホールのような造りをしていた。

コツン……コツン……。

靴の底と硬い大理石がぶつかり合い、ロビーに音が響く。
出口らしい自動ドアが見つかったので、出ようとした時だった。

「待て。」

後ろから低い声がした。声がするまで、気配に気づかなかった。
ゆっくりと後ろを向く。
受付の上の階段に自分と同じぐらいの身長の者影が見える。
しかし、逆光で顔が見えない。

「誰だよあんた?」

零衣の低い声で問うた。
すると、者影はその場から天井ギリギリまで高く跳び、受付の前に音も立てずに着地した。

「美波風 四軌だ。御前と同じ14歳。で、この会社の一員だ。」

パンクな服装に、髪もワックスをつけているのか、横にツンツンだった。
右目を隠すように、前髪をかけている。色が抜けて、金髪に近かった。
Tシャツの上にタンクトップを重ね着をし、破れかかった膝までのジーパンを着ている。
身長も体格もほぼ零衣に等しい。

「よく私の年齢まで知っているものだな。——それより、何か私に用があるのか? 急いでるんだ。」

そう——呉阿という包帯女に、任されたのだ。
零衣と会う者を探すことを。
出来るだけ、早く終わらせたい。
こんなとこで道草をくっっている場合じゃない。

「用も何も。只、御前と闘いたいだけだ。だから——。」

四軌は両手を高く上げ、下へと勢い良く振った。
すると、両手には黒い手袋の上から元の指より大きい爪が装着されていた。
指ごとに爪が付けられていて、爪は紅く染まっている。

「武器を構えろ、鉄川!!」

そう吼えると、四軌は床を蹴り、零衣に向かって突っ込んで来る。

「——っ!!」

零衣は咄嗟に胸から、阿修羅を取り出し構える。

キィィィン。

鼓膜を抉るような金属の音がお互いの耳とロビーに響いた。
構えた阿修羅に四軌の爪が絡んで、阿修羅が引けない。
片手で阿修羅を掴み、もう片方の爪で零衣の喉を裂こうとする。

(ヤバっ。)

危険を察知した零衣は、阿修羅から手を離し、距離を空けてから、回し蹴りを四軌の頭に向かって放つ。

「くそっ!」

四軌も阿修羅を離し、後ろに下がる。
支えがなくなった阿修羅は床へと落ちる。
円を描いて回り、カランカランッと虚しい音が響いた。

(このまま殺り合ってても、キリがなさそうだな。——仕方ない。面倒なことになるかもしれないが。)

零衣は落ちている阿修羅を拾い、出口に向かって駆けだす。
ドアが開く様子もないので、阿修羅でガラスを割る。
破片が頭にかかるが、気にせず会社が出て行く。

「逃げられたか……! くそっ!」

どうせ追っても、見失うだけにありそうな為、追い掛けるのは止めた。
——苛々する。近くにあった、大理石で出来ている柱を思い切り叩く。
柱にはヒビが入り、ポロポロと欠片が落ちる。

「今度こそ……!」

四軌は悔しそうに、奥歯をギリギリと噛んだ。