ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Got Part -神の一部- 拾弐話up ( No.111 )
- 日時: 2010/08/14 15:16
- 名前: 輝咲 ◆7kKwdRQzyk (ID: r4kEfg7B)
●2章 part四
「うっ……!」
勢い良く会社から出たのはいいのだが、慣れていない都心の空気や太陽の光が、零衣を襲う。
四軌が追って来ても面倒なので、念の為会社から離れた路地裏に佇む。
「ったく……全然村とは違うな。」
どこを見ても、村とは違うものが溢れかえっている。
こんな路地裏からでも分かる。
空を目指しているかの様な高層ビル。
者の通りが絶えることのない程の沢山の者の数。
道には者工的に植えられたかの様な木。
そして、車輪をつけて走る変わった物体が。
零衣にとっては、見たことのない物がありすぎている。
「——早く例の者を探さねぇと。」
見たことない物を眺めている場合ではなかった。
左眼の眼帯を外し、そっとイヤリングに触れる。
「……どうやってやるんだ?」
そういえば——この能力の解放の仕方を知らない。
遊衣と闘った時は確か、あの女の声が勝手にやってくれた。
『神眼発動——覚えといてね。』
「——!!」
あの女の声がそう唱えると、イヤリングは砕け、瞼が開けれるようになる。
それだけを言いたかったのか、発動の仕方を教えると、すぐに声は消えていった。
まぁ、助かったのは間違いなしだった。
これで例の者を探せれる。
零衣は瞳をゆっくり動かしながら、大通りに出た。
者込みに呑み込まれそうな数だが、できるだけ者から避けて歩く。
左眼の世界は、真っ暗な風景に、色とりどりの炎が揺らめいている。
これが多分、『感情』というものを表している。
まぁ、当然のように、零衣には何も灯っていない。
(そういえば……。)
遊衣との闘いで、助けてくれたあの呉阿という女に不自然なことがあったのを思い出す。
隣にいた拳銃女の炎は視えたのに、呉阿の炎は視えなかった。
というより、『視せてくれなかった』の方が近いかもしれない。
今更、どうでもいいことなのだが。
不意に思い出してしまった。
遊衣のことも思い出してしまったことに後悔していると、ドンと肩がぶつかった。
「ちっ!」
ぶつかった男は不機嫌になったのか、厳つい顔で舌打ちをし、零衣を睨んでくる。
殴り合いはできるだけやりたくなかった零衣は、目を細くして男に睨み返した。
すると、さっきまでの表情とは真逆の怖がった表情になり、目を逸らし小走りで消えていった。
(弱いくせに、強がったことをする。一番、目障りな野郎だな。あんなのは雑魚以下のカスだ。)
弱い奴は雑魚などと、侮辱していると。
視界におかしな、『炎』が視えた気がした。
もう一度、そこに視線を戻してみると、おかしな炎がまた視えた。
煉瓦造りの家の向こう側の路地からだった。
不規則に炎が揺らめき、小さく燃えている。
普通に視えている炎とは違うのは確かだった。
(『その能力を使えば必ず分かる。保障する。』)
呉阿の言葉が脳に過ぎる。
もう、躊躇っている暇はなかった。
慎重にその炎が灯されている路地へと歩いて行く。