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Re: Got Part -神の一部-  拾弐話up ( No.113 )
日時: 2010/08/23 11:48
名前: 輝咲 ◆7kKwdRQzyk (ID: PAeJS2fQ)

●2章 part六


家と家の間のうす暗い小さな広場までの道を歩く。
炎は広場から視えている。
広場に近づくほど、炎がくっきりと視えてくる。
そして、広場の表に出ようとした時だった。

「てめぇらぁ!! 殺ってしまえ!!」

男の怒鳴り声が聞こえた。
ピタリと歩を止め、家越しに左眼で状況を確かめる。
あの小さな炎の周りに、6個ぐらいの炎が揺らめいている。
小さな炎の前にある、炎だけが大きく燃えていた。
紅く燃えさかり、ドンドン大きくなっていく。

(行ってみるか。)

零衣は武器を構えず、広場に出た。
左眼で視たように、状況は正しかった。
男達が囲んでいる中に、咳をしている女の子が1者いた。

「御前等、女を苛めてどんな利益があるんだよ。」

「あぁ!! んだてめぇ!? 殺られてぇのかぁ!?」

体が角ばった男は怒鳴り散らした。
さっきの声と同じ声だった。
よく視れば、怒鳴った男の片腕の手首が凍っている。
状況的に、あの女がやったみたいだ。

「別に。只、煩かっただけだ。てか、声のボリューム下げろよ。」

「なんだとぉ!? 調子に乗ったこと言うんじゃねぇぞ!!」

男はまた怒鳴った。
零衣のドスドスと前へと歩み寄る。

「もう一度言う。声のボリュームを下げろ。」

「はぁ!? 誰に向かって言って——」

男が切れて、腕を上げた瞬間だった。

ブシュゥゥゥ———。

男の手首から血飛沫が散った。
切断された手はコンクリートの地面にボトリと落ちた。
辺りの空気は沈んだようになった。

「……ギャァァァァァァ!!!」

手が無くなったことに反応が遅れた男。
地面に蹲り、切断された腕を掴んで、ガタガタと震えている。
追い討ちをかけるかのように、傷口より少し上に、阿修羅を突き刺す。

「ウギャァァァァ———!!」

叫び声と呻き声が混じった声を上げる。
男は涙と鼻水を垂らしていて、汚かった。

「御前、言葉が分からないのか? 私は、『声のボリュームを下げろ。』って言ったんだ。素直に下げないから、こんな事になったんじゃないのか?」

「うっ……!」

男は言い返せない。
痛みに耐えるので精一杯みたいだ。
とどめに、阿修羅を頭に突き刺した。

「あ、兄貴がやられたぞ……!」

「なんだよアイツ……!」

「強すぎだろ……!」

残った手下達はヒソヒソと恐れるように小話をしている。
そして、如何にも体つきが弱そうな男が武器を構えて突っ込んでくる。

「兄貴の仇ぃー!」

——無謀にも程があるな。と零衣は呆れてしまった。
刺した阿修羅を引き抜き、突っ込んでくる男の喉に阿修羅を振るう。
大量の血が飛び散り、男は静かに崩れ落ちた。

「ヒィィ!!」

男達は驚き竦み上げた声を上げた。
中には腰を抜かしている者もいる。
零衣はゆっくりと、男達の方へと歩いて行く。
そしてたどり着くと、素早く阿修羅を振り、男達の体を斬り裂く。
——あっという間に地面は血の海となった。
女は唖然とした顔で、零衣を見つめていた。
目は丸く、クリーム色の髪は長く天然のウェーブがかかっている。
肌は白く、雪のように見える。
——愛嬌がありふれた女だった。

(こんな女が、アイツが言ってた奴のわけがないよな。)

期待が外れ、此処には用がないと思った零衣は、女に背を向け歩き出す。
歩く度に、地面に広がった血の面が揺らめく。

(———血。)

夢にも出てきた、大量の血。
その上に、沢山の死体。
この光景が、夢と同じに見えてきた。

——プツッ。

何かが繋がる様な音が聴こえた。
そして、左眼の様子がおかしい。
——焦点が合わない。
同時に、目眩が起きる。

(何だこれ!? 左眼が——!)

左眼を思い切り手で押さえる。
それでも、左眼の焦点は合わない。
歩くと足が縺れそうになる。

『——現在と過去が繋がった。』