ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Got Part -神の一部- 拾弐話up ( No.114 )
- 日時: 2010/08/23 11:50
- 名前: 輝咲 ◆7kKwdRQzyk (ID: PAeJS2fQ)
●2章 part七
(——は?)
淡々とした口調で、例の『声』が語った。
今までに無い喋り方で、零衣は一瞬怯んだ。
(くそっ! 訳がわからん! さっきから——)
頭を抱えて悩んでいたら、女が零衣の近くまで来ていた。
「あ、あの〜……大丈夫ですか?」
「——!!」
近づいていることに全く気づかなかった零衣。
反射的に女から離れる。
何故かその時、左眼も焦点が元に戻った。
「もし頭が痛かったら、甘い物が良いですよ。意外に落ち着きますし。」
そう言って女の手には、『チョコレート』が——。
夢に出てきたパッケージとは違ったが、形はほぼ同じだった。
ザザザ———。
女の顔を視ると、左眼がまたおかしくなった。
目の前にいる女の顔と、夢に出てきた救世主の顔が、ほんの一瞬だけ重なって視えた。
差し出している手も、顔の表情も、その血と死体の背景も——全てが現在と一致した。
「……!」
女の頬が熟した林檎の様に赤くなっている。
さっきまでの白い肌とは別物になった。
「おい……御前も大丈夫なのか? 顔が真っ赤だぞ。熱あるんじゃないか?」
別に心配とかはしていないが、急に頬が真っ赤に染まったことが不思議に思った。
女はさっきよりも頬を赤くし、手を横にブンブンと振って否定した。
「だ、大丈夫です! 熱はありませんよ! ——それよりも、頭の方は治まったんですか?」
零衣には、話題を無理矢理変えた素振りに見える。
そんなことは気にせず、零衣は答えた。
「あぁ、まぁな。」
確かにおかしな左眼の症状は治まった。
しかし、疑問が微かに頭に残った。
(どうしてだ? この女が話しかけられると、左眼の症状は治まった。それが二度も起きた。)
頭を捻らせたが、良い答えが思いつかない。
多分これは、考えても意味ない——と零衣は改めた。
「その左眼の模様変わってますね。」
頬の色が元に戻った女が、零衣の瞳に疑問を抱いた。
零衣の顔を覗き込んでいる。
「御前、この模様が見えるのか?」
意外な質問に、根本的な質問で返してしまった。
「当たり前ですよ。だって、こんな神秘的な模様が瞳に映ってるなんて、普通じゃ有り得ませんって。それに、私が働いている会社のボスの額に、その模様がありますし。」
「何!? ボスだと!?」
『ボス』という言葉に反応してしまった。
それに、『額』の方も気になる。
「え、えっと……。」
いきなりの質問に戸惑いの様子が表れている。
——不運と言ってもいいかもしれない。
この場に呉阿が姿を現した。
「ようやく出逢ったようだな。おめでとう。」
皮肉っぽく呉阿は微笑みながら言った。
その姿を見て、女は呉阿の元へ駆けて行く。
「ボス! どうして此処に? ——痛っ!」
呉阿は女の額にデコピンをした。
両手でやられた部分を抑えている。
「いい加減慣れたらどうだ? 『男』に。」
少し呆れた様に言うと、女はモゾモゾしている。
「男は〜……無理。」
「ったく……。」
呉阿は大きく溜め息を吐いた。
次に零衣を見て、呆れた様に話しかける。
「ちょっとやりすぎじゃないか?」
零衣の周りは、死体と血が溢れている。
血の量に対して指摘しているのだろう。
「襲ってきたから、身を守る為に殺っただけだ。他に理由はない。」
「能力はピカイチなのに、性格は問題児だな。——まぁいい。兎に角、此処から離れるぞ。誰かに見られたら面倒だ。」
「了解ボス!」
「……。ダルい……。」
零衣は呉阿と女に聴こえないように、小さな声で呟いた。
——呉阿が一瞬笑った気がした。