ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Got Part -神の一部- 拾弐話up ( No.115 )
- 日時: 2010/08/25 16:44
- 名前: 輝咲 ◆7kKwdRQzyk (ID: P8fkdnbW)
●2章 part八
零衣がさっき歩いてきた大通りを歩く。
呉阿を真ん中に、左右それぞれに零衣と女が歩く状態となった。
「早速本題に入るが、うさみを零衣の秘書にあたる者になってもらう。」
「はぁ!?」
「え!?」
零衣と、『うさみ』と呼ばれた女は同時に驚きの声を上げる。
驚きすぎているのか、うさみの表情が固まっている。
「何でだ? 私はまだ14だぞ。秘書なんていらん。」
零衣は呉阿の提案を拒否した。
普通に考えれば、こんな歳で秘書をつけるなんて有り得ない。
「歳とかは関係ない。他の会社の社長の息子や娘は、普通につけているぞ。5歳でつけているとこもあるしな。」
「……狂ってんな。」
呆れすぎて、上手く言葉が出てこない。
この世界自体が狂ってる。——零衣は無意識に空を見上げた。
「それにうさみの御陰で『左眼の症状』だって治ったんだろう?」
まるで、知っていたかのように呉阿は言った。
嫌がらせなのか、『左眼の症状』を強調している。
「——! どうしてそれを!」
零衣は驚愕してしまった。
まだ、そんな事を話してもいないのに。
先を読まれた感じだった。
「その事は会社に着いてから話すさ。兎に角、うさみを秘書とする。良いな?」
「——あぁ。」
もう、反論したって勝ち目が無い。
零衣は諦め、仕方なく承諾した。
「うさみも良いな?」
「うん!」
コイツ——と零衣はうさみを酷く恨んだ。
どう考えても、反論はするだろ。
「——という訳で、お互い自己紹介だ。」
呉阿は両手を、零衣の頭とうさみの頭にポンと乗せた。
まず、先に言ったのがうさみだった。
「私は、冬野 うさみって言うんだ。ヨロシク!」
満面の笑みで自己紹介をされた。
てか、笑顔輝きすぎだろ。
ふと、そんなことを思ってしまう程だった。
「……私は、鉄川 零衣。歳は14だ。」
「14? ——なら、私と同じだね!」
また、あの笑顔で答えられる。
目を合わせるのが、不意に面倒になってきた。
自然的に視線をうさみから外した。
「そうか。——!!」
零衣はできるだけ、驚きを誰にもばれない様にする。
息が止まってしまうぐらい驚いたが、運良く誰にもばれなかった。
「じゃ次は——」
呉阿が何かを話しているみたいだが、頭に入ってこない。
そんな事よりも、零衣には個者的な問題が発生していた。
零衣の目の前の視界には、黒いフードを深く被った者が、零衣の反対側から歩いてきている。
身長は大体、零衣と同じぐらい。
下は赤のチェックの短いスカートを着ている。
顔はフードのせいで見えない。
左手には人形が抱えられ、右手にはお菓子らしき袋が抱えられている。
特徴がとても、夢に出てきた『救世主』に似ていた。
——いや、『似ている』と言うより、『同じ』かもしれない。
——プツッ。
まただ。
何かが繋がる音がする。
当然のことかの様に、左眼の焦点が合わなくなる。
必死で左眼を押さえるが、意味がなかった。
(うっ……。クソ! 治れ!)
どんなに胸の中で叫んでも、治まる様子はない。
そんな事を思っている内に、どんどんお互いの距離が縮まっていく。
ついでに、心臓の鼓動も早くなっていく。
————。
フードの者と隣ですれ違った。
あっちは零衣の存在に気づいていない様子で歩いて行った。
運が良かったのか、悪かったのか。
夢に出てきた者とそっくりな者を見かけてしまった。