ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Got Part -神の一部- ( No.137 )
- 日時: 2010/09/05 19:31
- 名前: 輝咲 ◆7kKwdRQzyk (ID: hiWAYpdm)
2章 part拾壱
時は昼なのに、廊下は薄暗い。
零衣が部屋から出てきた時よりかは、少し明るくなっている気がする。
床は赤い絨毯が広がり、一直線に廊下に伸びている。
部屋のドアの模様が全て同じで、どの部屋が零衣が出てきた部屋か分からない。
——ふと、うさみからの視線に気がつく。
じっと、零衣の顔を見つめている。
不自然に思った零衣は、目線を合わせず聞いた。
「何だ?私に何かあるのか?」
「え……な、何でもないよ。只見てただけ。」
うさみはにっこりと微笑む。
頬を薄っすら赤く染めながら。
「そうか。」
これ以上話すのが面倒なので、適当に相槌を打っておく。
(変わった野郎だな。——しかし、この会社の野郎共は変わった者ばっかだ。呉阿って奴は、私がやった行動を先読みしてくるし、ロビーで出会った四軌って奴は、いきなり私を襲ってくるし、コイツはコイツで、私に笑顔ばっか向けてくるしよ。——マシな奴が全くいない。あ——。)
久しぶりにこんなに物事に深く考えた。
やっぱり、頭を回転させるのは面倒だ。
エネルギーが減っていく気がして、頭が重くなっていくのが気に食わない。
暫く物事を考えないようにする。
「あっ……!此処だよ、私の部屋。」
うさみは少し身を乗り出し、一番近くにあった部屋の扉を指で指す。
特別な模様とかはしておらず、そこらと同じ普通の扉だった。
零衣は両手が塞がっていて、ドアノブを回せないことに気がついた。
一々降ろして、開けるのが面倒に思う。
「ここまででいいだろ?」
「うん!ありがとう、れいちぇる!!」
また、変な名前を言われるが、気にしててもキリがない。
零衣は腰を下ろし、うさみをそっと立たせる。
「じゃぁな。」
手を上げての別れの挨拶とかはなく、無表情でうさみに背を向け、歩いてきた廊下を戻っていく。
「本当にありがとう!!れいちぇるは優しいね!!」
大声で礼の言葉を言われるが、零衣は何とも思わない。
——『何も感じない。』
まず、『優しい』という言葉さえ分からない。
思い出そうとも思わない。
零衣はどんな言葉を返したらいいのか分からず、うさみの言葉を無視した。