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- Re: Got Part -神の一部- ( No.138 )
- 日時: 2010/09/09 20:04
- 名前: 輝咲 ◆7kKwdRQzyk (ID: Wvf/fBqz)
●2章 part拾弐
——暫くして、零衣は再びロビーに到着した。
言ってたとおり、呉阿はロビーにいた。
零衣に背を向ける方向で、ソファーに腰を掛けている。
零衣が来たことを察知し、その場から顔も動かさずに話しかけてきた。
「どうした?浮かない顔をしているぞ。」
「——!!」
これで何度目だろうか。
零衣の行動や表情を、『先読み』されたのは。
「そろそろ話せよ。どうして私の行動や表情を、『視ていない』のに分かるんだ?」
「そうだったな。そろそろ話すか。」
楽しそうな声で話し終わると、呉阿はソファーから立ち上がる。
そして、ゆっくりと体を零衣に向けた。
呉阿の額には、包帯が巻かれていなかった。
そのことがあってか、視線が額の方へいってしまう。
「なっ——!!!」
零衣は酷く驚くと同時に、思考が停止してしまった。
体が固まって、動かない。
「この印、知っているだろう?」
「……。」
顎も固まって、返事が出来ない。
そう——まさか。
零衣の瞳と同じ、『銀色の十字架』が呉阿の額に刻まれているなんて——偶然にも程がある。
少しずつ回復する思考によって、こう考えられてきた。
(私と『同じ』能力——!?)
不運すぎるかもしれない。
あの女の声が言ってた事が本当なら、相当危険な存在になる。
——『神』という、空想上最強の者の能力を持っているのだから。
「そんなところまで知っているのか。意外だな。」
「御前また、その『神の能力』とかいうヤツで、私の思考を読んだのか……!?」
しっかり思考が回復した脳で考えた。
暫く物事を考えないようにしようと思っていた零衣だが、それは叶いそうにない。
「因みに、御前と私の能力は違う。御前の場合は、『視界』を活かした能力、私の場合は、『頭脳』を活かした能力だ。」
(なるほど——。)
大体、呉阿の能力がどんなのかが分かってきた。
多分、『考え』を中心とした能力だろう。
——ということは、零衣は『視る』を中心とした能力の筈だ。
何故だろうか——物凄く頭が切れる。
「良かったじゃないか。」
「まぁな。それで、無駄な会話が省ける。」
呉阿に先を読まれるのが慣れてきた。
零衣は眼帯を外し、『あの言葉』を唱えた。
「——神眼発動。」
イヤリングが砕け、あの『銀色の十字架』の瞳が現れる。
何をするのか、『予測』が出来ない呉阿は、少し身を構える。
「——やっぱりだ。」
零衣の視線は、呉阿の胸辺りにあった。
「姉さんと闘ってた時に、御前は現れた。突然、見知らぬ者が現れると、誰だって見知らぬ者を視る。——そん時だ、この眼に不自然なことが起きたのは。」