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Re: Got Part -神の一部-  ( No.139 )
日時: 2010/09/12 22:08
名前: 輝咲 ◆7kKwdRQzyk (ID: sLRBYAgN)

●2章 part拾参

「……。」

呉阿は黙々と零衣の話を聞いている。
しかし、構えは解いていない。

「御前だけ、『炎』が視えないんだよ。——それが、ずっと喉がモゾモゾして嫌だったんだ。」

「……そうか。」

さっきとは違っていた。
——呉阿の態度が明らかに違う。

「何故だ? 御前の能力なら、こんな事も予測出来たんじゃないのか? それなのに、反応が少しおかしい。」

「鋭いな。そこは、遊衣と似てるな。アイツは御前程じゃないが、頭が切れるんだ。」

呉阿は苦笑した。
昔を思い出したかの様な表情だった。
零衣にはそんな事より、聞きたい事があった。

「そして、まだ疑問が残っている——。」

床を思い切り蹴り、呉阿の元へ間合いを詰める。
その途中で阿修羅を胸から抜き、喉に水平に振るう。

「っ……!!」

いきなりの奇襲で焦る呉阿。
ジャンプして、向かいにあるもう1つのソファーに着地する。
そんなのはお構いなしに、今度は体を真っ二つにするように縦に振るった。

「ぎっ……!」

手に汗を握りながも、咄嗟に胸から呉阿の武器、槍の『ラック』を引き抜く。

キィィィン!!

阿修羅の刃と、取り出しかけたラックの柄がぶつかり合った。
——やはり、大人の方が力は強い。
引き抜いたラックを力任せに振るう。
力に負けた零衣は、5メートル程飛ばされる。
それでも、零衣は見事に体勢を立て直す。
阿修羅を床に突き刺し、ブレーキ代わりにして止まる。
火花が飛び散り、床の大理石が削れていく。
吹き飛ばされたせいで、呉阿との距離がかなり空いた。

「物の扱いが悪いな……。それよりも、何故私に奇襲なんで仕掛けてきた?」

落ち着いた様子で、零衣に話しかけてくる。
もう奇襲はないと予知したのか、武器は構えていない。

「おかしいと思わないか? 『神の能力』は。」

「——?」

呉阿が問いかけた話とは、全く関係のない答えが返ってきた。
しかも、逆に零衣に問いかけられた。
よく分からない質問に、呉阿は何を言ったらいいのか分からない。

「——最強の能力と言えど、それ同士が闘えば、必ず『矛盾』というものが起こる。その事は『今』気がついた。だから——」

零衣はまた、呉阿との間合いを詰めていく。
そして、阿修羅を斜めに振るった。
今度は冷静に呉阿は攻撃を、ラックを両手で構えて受ける。

「それを今から正しいか確かめる。」

零衣は一度、阿修羅をラックから離し、コンボのように連続で阿修羅を振るいだす。
さすがに連続で攻撃を受けると、呉阿が押されていく。

「そんな事まで分かったのなら教えてやる。」

不利な状況なのに、呉阿は嘲笑い、ラックで零衣をなぎ払う。
さっきよりかは吹き飛ばされなかったが、また呉阿との距離が空く。

「たしかに、零衣のいうとおり、『神の能力』同士が闘えば、『矛盾』が起こる。
 零衣も気がついているだろう? 私が『今』の零衣の動きを、予測できていないことに。」

呉阿は「今」という言葉を強調した。
何か、特別な意味を持ってそうだった。

「あぁ。気づいていた。」

「それが、一番の弱点なんだよ。『神の能力』同士が闘えば、能力が『中和』してしまうんだ。勿論、御前の場合もさ。」

今度は呉阿が、零衣に攻撃を仕掛けた。
当然のように、零衣は『左眼』を使って攻撃を視る。
——そこまではいつもどおりだった。