ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: MIRAGE ( No.1 )
- 日時: 2011/03/29 19:58
- 名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: 0iVKUEqP)
プロローグ〜壊れたココロ〜
小さなお墓の前であろうか? 銀髪に赤と青の瞳の少年が静かにフルートを奏でている。静かでどこか寂しげな音。優しく吹く風が少年の羽織っているケープをはためかせる。風に靡いている髪は日を受けてキラキラと光る銀色で腰の辺りまでの長さ。どこか神秘的な雰囲気を作り出している。
少年の名は月音 優希(ツキオト ユウキ)。この世界……魔界の中でのトップの家系、魔王家の第一王子である。魔王と聞くと悪いものをイメージしてしまう人もいるであろう。
でも彼らでいう魔王は魔界の王……魔界をまとめる存在であり、決して人間達の住む下界に無意味な危害を与えたりする者ではない。もちろん必要となればそれなりの行動をとるのだが。
「……ごめんね……姉さん」
フルートの音が途切れたかと思えば、か細くて、消えそうな声で呟く優希。空気に溶けるようにフルートは消えてく。優希フルートが完全に消えると同時にその場に崩れるようにしゃがみこむ。
嗚呼、この場で子供のように大声を上げて泣くことができたら、どんなに楽だろうか? そんな考えが頭の中を駆け巡る。でも涙はとっくの前に枯れていて、一雫もこぼれない。
「本当に馬鹿みたい。なんで制御できなくなるまで自分をいじめ続けたんだろう……そのせいで姉さんが……それに望も……」
優希は静かに笑う。でもそれは、誰かを元気付けるようなものでも、人に安心を与えるようなものでもない。そう……儚くて壊れかけた不安定で、自分の胸を深く抉る様な自虐的な笑み。
静かに吹く風でさえも優希にとっては雑音。子供達の明るい笑い声でさえも、彼にとっては嘲笑……。ぎゅっと唇を噛み、両手で耳を塞ぐ。それでも頭の中では“声”がぐるぐると巡っていて……。
「もう……苦しいよ」
優希の口からこぼれだした言葉は、悲痛で消えそうな微かなものだった。