ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: MIRAGE ( No.4 )
- 日時: 2011/03/29 19:59
- 名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: 0iVKUEqP)
第三話 誤解時々行事参加
優希たち五人が姿を現したのは第三特別エリアだ。やはり行事があるときは、ふだん人か近づかないような場所でも人で溢れるらしく酷く混雑していた。しかも大体が柄の宜しくない連中で、警備に当たっている魔法警察の皆様は涙目である。受付の人なんか怯えてしまって余計に混雑が酷くなる一方だった。そんな様子を見て月乃はクスリと笑い「Sランクでも扱き使えばいいのに」なんて言っている。
ランクと言うのはその魔法使いの総合的能力で分けた階級分けで、魔王一族を頂点とし、位の高い順にSランク、Aランク、Bランク、Cランク、Dランクに分けられている。S、Aランクが天才レベルの魔法使いであり、B、Cはノーマルランク、C、Dが落ちこぼれレベルなんていう風に分けられることも有ったりする。まぁSランクとDランクは相当珍しく、双方五人ずつしかいないのだが。
「まぁSランクは任務とかで忙しいだろうしな。もしくは参加者として居るんだろ。Sランクにも息抜きが必要ってな」
輪廻がカラカラと笑いながら言えば、春は「どっちにしろ戦いだから意味が無いよぅ?」と不思議そうな表情で言う。望は優しげな笑みを浮かべていて、優希は周りの柄の宜しくない連中がこっちに被害を及ぼさないかに気を配っている。月乃がポンと春の肩を叩いて「負けたりヘマしてもランクに影響はないから緊張感無しに戦えるんだよ」と笑う。まるでSランクを馬鹿にしているかのように。
三十分は待っただろうか? やっと優希たちが受付の番だ。輪廻が受付の記入用紙を見て困ったような表情をし、欄の一つを指差して優希に見せる。輪廻が指差している欄は……階級。優希は少し驚いたような顔をしながらも落ち着いた声で「まぁ、普通に書いちゃっていいと思いますよ」と言った。心配そうな表情をしながらも階級の欄に魔王一族と記入した。何とかなる何とかなると輪廻は笑っているが、妙な汗が滲んでいる。
今回の魔法大会は対戦方式で魔法使い同士が戦い、駒を進めていくらしい。魔法大会といえば自分の魔法を見せ合って、どちらが難しい魔法かを判断するタイプのものしか知らなかった輪廻と望、月乃、春はキョトンとしていた。優希はそんな四人を見てクスクスと笑っていた。輪廻と優希で人間で言えば五歳程度離れているのだが、たったそれだけでこんなに差が、と輪廻はくだらないことに悔しさを感じていた。
アナウンスが響き渡る。あまりにも大きな歓声に望は小さく丸まり、優希は顔を顰めていた。輪廻の方はむしろ涼しげな表情で、大して気にしていない様子。月乃と春に至っては完成に混じって大声を上げている始末。なんと言うか優希と望が哀れに思えてくる瞬間だ。とりあえず輪廻は優希と望をはさんで大声を上げているちびっ子二人に拳骨を落としておくことにする。
アナウンスでルール説明などをしているのを聞いて、輪廻は黙ってマントを外す。アナウンスで対魔法装備は外すことと言っていたからである。対魔法装備と言うのはその名のままで、魔法を遮断する物のことだ。ちなみに着ていたところで、魔法を使うのには問題は無い。形は服、だったり、輪廻のようにマントだったり、髪飾りだったりと様々である。まぁ、対魔法装備なんて持っている魔法使いは全体から見てほんの一部なのだが。
「兄様はケープを脱ぐ、望はコート。春と月乃もコートだな。対魔法装備禁止らしいから」
輪廻の言葉を聞けば、優希と望は大人しく言われたものを脱ぎ、月乃と春は不満げな表情でぶつぶつと文句を言っていたが輪廻の「うん。失格になってもいいなら着てな」と言う言葉で慌ててコートを脱ぐ。
対戦表が大きなスクリーンに表示される。一回戦目はどうやら望の出番らしい。対戦表を指差して慌てる望を優希が苦笑いを浮かべながら落ち着かせていたりする。月乃と春はそんな様子を面白そうに見ていた。
「それでは第一回戦、魔王一族、月音 望対Sランク、龍月 琉華(リュウヅキ ルカ)!!」
ざわめきが大きくなる。当たり前だ。対戦カードがこんなにも豪華な戦いなんて早々見られないものなのだから。ましてや魔王一族が出てきたとなってみろ、普段は見られない魔法が見られると言うことで、テンションが上がってしまっても仕方がないだろう。ざわめきが最高潮に達した頃、フィールドの中央に水色の髪、紫の瞳の少年、琉華が現れる。少年は白いワイシャツに赤いネクタイ、下は黒いズボンと言う格好だ。ネクタイを見るに本来は上にもう一枚何かを羽織ったり、重ね着しているのだろう。おそらくそれが対魔法装備なのだ。
少々遅れて望もフィールドに現れると、琉華はにこやかに手を差し伸べ「どうも初めまして、魔王一族、第三王子、月音 望様。お手柔らかに頼みますね」と言った。