ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 〜The stop world〜 ( No.2 )
日時: 2010/05/31 22:12
名前: ハバネロ (ID: EWcIN/Ij)

【時間管理府とPSIBAR「サイバー」】

『日本のみなさん、知っての通り現在は時間が停止しております。』
街中の大きな液晶画面。画面に映っているのは現総理大臣の熊本龍之介だ。
熊本は白髪をワックスで固め、七三わけをし、野太い声で日本市民に話を続ける。
『時間が止まってから、皆さん不安が多いでしょう。しかし!!ご安心ください。』
総理の言葉に、市民全員がざわつき始める。
『我々政府は、この事態を収拾してくれる新しい組織を創設しました。その名も、時間管理府!!』
熊本の言葉と同時に、時計の絵を背景に「P」と大きく書かれた画面が映る。
『時間管理府「PSIBAR」。彼らはこの世界を良くするために行動します。もちろん、市民の平和と安全を第一に活動します。』
熊本はそう言うと、笑顔で画面に再び映った。
『私は、我々政府は必ず時間を再び動かして見せます。』
熊本の言葉に市民は歓声を上げた。
そして、画面から熊本は消え去った。

**********

「ハァハァ・・・・」
足まである黒いコートに黒い帽子、髪を金髪に染めた男は湿った暗い路地を駆ける。
「いたぞ!!あそこだ!!」
男の後ろから、数人の足音が急ぎ足で聞こえる。
男は汗を流しながらも、どうにか足を動かした。
「田中栄次郎!!おとなしく止まれ!!」
「っざけんな!!!嘘つき野郎どもが!!」
田中は路地を抜けると、人気の少ない大通りに出た。
路肩にはちょうど大型トラックが止まっており、田中は迷わず荷台に乗り込む。
「見失うな!!奴はすべてを知っているんだぞ!!」
路地から出てきたのは武装した自衛隊と一人のスーツを着た男だった。
田中は荷台に積まれた段ボールの陰からスーツ姿の男を見つめる。
スーツ姿の男は髪が赤く、目はすべてを見通しているような漆黒の色。
そして右目の下にある独特なバツ印の切り傷。
男たちが探している間に、トラックは運よく動きだす。
「よし・・・」
田中は小さなガッツポーズをすると、段ボールに寄りかかった。
「とりあえず、第一関門成功だな。」
田中はその言葉を最後に、そのまま目を閉じた。

**********

「奴はどこだ!?」
「す、すいません!!見逃しました!!」
自衛隊隊員がスーツを着た男に脅えながら頭を下げる。
スーツの男は舌打ちをすると、地面を強く蹴りあげた。
「捜索隊を呼んで隅から隅まで探し出せ。分かったか!!!」
「はっ!!了解しました桐谷隊長!!」
桐谷と呼ばれる男に敬礼をすると、自衛隊隊員はすぐに応援を呼びに行った。
「必ず捕まえてやる・・・田中・・・・」