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Re: 〜The stop world〜8話うp♪ ( No.24 )
日時: 2010/05/30 17:46
名前: ハバネロ (ID: EWcIN/Ij)

【潜入】

マニプラット・エンタープライズ 受付ロビー

大理石の床に、天井につるされた大きくて豪華なシャンデリアのロビーにとある人物がいた。
受付嬢はその人物の突然の訪問に動揺している。
「あ、あの、今日はどのようなご用件で?」
「社長に用があるんだ。今すぐ会えるかい?」
四国・中国地方治安部隊の特別隊長である本城琢哉は受付嬢に質問する。
本城はほかの隊長とは違い、革ジャンにジーパンという私服で出歩いている。
「社長は現在お仕事中なので、明日にならないと・・・」

「いいよ。」

本城の後ろには社長の賢治の一人娘、理子が制服姿で立っていた。
普段は驚くことの少ない本城の表情が呆然としていた。
「・・・え?君って確かアイドルの・・・」
「そう。小沢理子だよ。父さんは社長。」
本城は理子を何度もテレビで見ており、顔を知っているのだ。
しかし、それ以前に本城は理子の父親がマニプラット・エンタープライズの社長ということに驚く。
「会わせてくれるのかい?」
「たぶん大丈夫だよ。父さんとは顔見知りなの?」
「あぁ。親しいんだ。」
理子は笑顔で返すとエレベーターに向かって歩く。
本城も後をついていき、社長室へと向かった。

**********

マニプラット・エンタープライズ社 地下駐車場

田中は車を止め、大きくため息をついた。
後部座席に乗っている2人は顔を見合わせる。
「どうするんですか?」
「考え中だ。それに、俺は逃亡の身だし、会社内をウロウロできない。」
田中は頭を抱えこみ、ハンドルにうつ伏せになる。
すると、心一のある閃きが浮かび上がる。
「今回の選ばれし者もさ、俺らみたいに子供じゃないの?」
「え・・?」
田中はその考えに頭を上げ、『そうか!!』といい笑顔になる。
「それにかけるぞ!!それなら見つけやすい!!こんな会社に子供がいるなんて、それだ!!!」
田中は車を降り、周りを見渡す。
車は数台止まっているが、人の姿やいる様子はない。
桃子は車のドアを開けながら田中に質問する。
「でもさ、どうやって行動すんの?私たち、制服だし・・・」
桃子と心一は自分の服を見る。
田中は逃亡犯で顔は知られているだろう。
「・・・・非常階段で行くか。」
田中は非常用階段に指を指して言う。
2人は顔を合わせて、全力で首を横に振った。
「な、何階まであると思ってんの!?ここ40階まであるんだよ!?」
「しょうがないだろ。ばれたら一発で終わるからな。行くぞ!!!」
田中は走って非常用階段に向かう。
心一と桃子も渋々、階段に向かって走り始めた。

**********

社長室

賢治はデスクで資料やファイルを見ながら仕事を懸命にしていた。
すると、秘書がドアを開いて頭を下げながら入ってきた。
「社長、お客様が・・・・」
「客?この時間は客など来ないぞ?」
「それが・・・・」
秘書が説明しようとすると、ドアが開き本城と理子が入ってきた。
賢治は本城を見ると表情を変え、思わず席を立ちあがる。
「やあ。久しぶりだね、3年ぶりかな?」
本城は笑顔で置かれてあるソファーに座り、賢治と向き合う。
「貴様・・・なぜ・・・・」
「理由は分かってるでしょう?あなたへの復讐だ。」
理子は本城の言葉に唖然とし、賢治の顔を見る。
賢治は唇をかみしめ、本城から目をそらす。
「あれは避けきれぬ事だった。選ばれた君の運が悪い。」

「黙れ!!!!」

普段穏やかでだらしのない本城が叫び、賢治のデスクを蹴飛ばす。
その拍子に資料やファイルが床に飛び散った。
「お前は、俺や先輩を虫けらの様に切り捨てた。これは復讐だ。」
本城は腰から拳銃を取り出し、賢治に向ける。
理子は何が何だか意味が分からない状況で、その様子を呆然と見ていた。
「・・・・話してやるよ。娘の前で、お前がどれだけ酷い人間だったことをな。」
本城は銃を賢治に向けたまま、過去の話を始めた。