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Re: 〜The stop world〜10話うp♪ ( No.34 )
日時: 2010/05/31 18:46
名前: ハバネロ (ID: EWcIN/Ij)

【第3の選ばれし者 小沢理子】

「くっ・・・」
突然現れた田中の銃撃に右肩を負傷した本城は、持っていた拳銃を床に落とす。
「お前がここにいる理由は聞かない。とりあえず、お前はここで終わりだ。」
「ふっ・・・・俺が死んでも・・・お前らは逃げられない。」
本城は腰から赤いボタンがついた装置を取り出す。
「あらかじめ時間管理府に連絡しておいた。直に関東治安部隊がなだれ込んでくるさ。」
本城は右肩を押さえながら腰から小刀を取り出す。
田中は後ろにいる心一、桃子、理子の方を振り向く。
「お前らは屋上へ逃げろ。ヘリがあるはずだ。」
理子はその言葉に頷き、行こうとするが足を止めた。
「お父さん・・・・置いていけないよ・・・・」
理子が泣きながら田中の方を見る。
田中は瀕死状態の賢治を見ると、大きく頷いた。
「こいつを倒したら一緒に行く。早く行け!!!」
田中が叫ぶと、3人は屋上へと走って行った。
「へぇ〜・・・・。ずいぶん優しいんだね・・・・」
「お前には分からないだろうさ。」
田中は小刀を構える本城に拳銃を向ける。
しかし、本城は怯むことなく何故か不気味に笑う。
「俺は・・・・もう政府には戻れない・・・・」
本城は小刀を捨てると、先ほど落とした拳銃を拾い自分の頭に銃口をつける。
「おいやめろ!!!!」
「先輩・・・・今行くよ・・・・・」
「よせ・・・」

バン!!!

本城は躊躇なく引き金を引いた。
床と壁に血が付き、本城は目を開けたまま悲しそうな顔でその場に倒れた。
田中は無残な死に方をした本城をしばらく見つめると、血まみれで倒れている賢治を抱えて屋上へと向かおうとした。
「本城・・・・お前のためにも頑張るよ。」
田中は最後にそう言い残すと、屋上へと向かった。

**********

マニプラット・エンタープライズ 屋上

ヘリポートにたまたまヘリコプターが一台止まっていた。
先に着いた3人は急いで乗り込むと、息を整え田中を待つ。
「・・・・一体、どういうこと?」
理子は心一と桃子を見ながら疑問を訪ねた。
「時間を戻すのさ。そのために俺らは必要な人物を集めている。」
「時間を動かす・・・?無理よそんなの・・・」
「できるよ!!信じればさ!!」
心一と桃子は元気のない理子に笑顔で接した。
すると、屋上のドアから賢治を抱えた田中が現れた。
「すぐ行くぞ!!」
田中は賢治を後ろに乗せると、すぐ様操縦席に駆け込んだ。
「風向よし。障害物もなし。離陸するぞ!!」
田中は素早い行動でヘリを離陸させた。

「お父さん!!お父さん!!!」
理子は出血大量の賢治に何度も声をかける。
しかし、どう見ても賢治は長く持ちそうにない。
「リ・・・・こ・・・・」
「お父さん!!!」
「頑張って・・・・生きろ・・・・・」
賢治は理子の頬に手を当てたが、パタリと落ちた。
「嘘よ!!そんなぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
理子は賢治の胸にうずくまると、大粒の涙を流して泣いた。
心一に桃子、操縦している田中も涙を流して賢治の死を悔む。
「・・・・うっ・・・うっ・・・・・」
「埋葬しよう。このままだと可哀想だ・・・・」
田中はそうつぶやくと、とある場所へとヘリコプターを向けた。

**********

東京 オレンジビーチ

東京の数少ない海に面している浜辺に、4人は来ていた。
4人は力を合わせ、亡くなった賢治を埋葬した。
「お父さん・・・・」
理子は先ほど摘んだ白い花を賢治の埋めた場所へ置く。
賢治は浜辺に埋葬し、分かりやすいように大きな木で作った十字架をたてた。
桃子は心一の顔を見ると、涙を流して抱きつく。
田中は埋葬された場所をじっと見つめ、目をつぶって頭を下げる。
「・・・・私も行くよ。お父さんを殺した政府を倒す。」
理子はそう言うと、涙を拭いて3人を見る。
「もう大丈夫なのか?」
田中は心配そうに理子に言うが、理子は笑顔で大きく頷く。
「うん。アイドル活動もやめて、お父さんの仇を討つ。」
理子は制服の胸ポケットから一枚の写真を取り出す。
その写真には笑顔で写る理子と両親の姿。
理子は笑顔でその写真を見ると、胸ポケットにしまう。
そして、4人は次の選ばれし者の場所へと向かうのだった。

**********

マニプラット・エンタープライズ社 社長室

頭を撃ち抜いて自殺した本城の横に、桐谷と治安部隊が立っていた。
「・・・・死んだのか。所詮は若造だったんだな。」
桐谷は本城の死体を鼻で笑うと、治安部隊の方を振り向く。
「指紋を調べろ。田中がここに来てるはずだ。それと、先ほど飛び立ったヘリの追跡も忘れるな。」
「はっ!!」
治安部隊隊員たちは敬礼をする。
桐谷は社長室を一通り見渡すと、トランシーバーを取り出した。
『こちら桐谷。本城は死亡しています。』
『・・・そうか。まあよい。四国と中国は黒崎君に任せよう。』
トランシーバーの相手は総理大臣である熊本だった。
熊本さえも本城の死を悲しまない。
『まあ、惜しい人物を失ったが、直に生き返る。』
『え?』
桐谷は熊本の最期の言葉に不審に思い、聞き返そうとしたが電源を切られた。
桐谷は首を傾げながらトランシーバーを終うと、先ほどの言葉を頭に思い浮かべながらその場を後にした。




『直に生き返る』________