ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 〜The stop world〜14話うp ( No.57 )
日時: 2010/06/03 17:32
名前: ハバネロ (ID: EWcIN/Ij)

【決行】

国立蛭ヶ丘刑務所

ついにこの時がやってきた。後5分足らずで自由時間となる。
刑務所内は妙に静かとなり、受刑者全員が脱獄を心から待っていた。
「あと少しですね。うまくいけば良いんですけど・・・」
心一はベットに座る田中に言った。
田中は笑顔で心一を見ると、大きく頷く。
「うまくいくさ。予想外なことが起きなければ・・・」
田中がそう言うと、刑務所内に自由時間のサイレンが鳴り響く。

『今から自由時間だ!!』

房のドアが開き、2人は廊下に出る。
ほかの受刑者と目が合い、全員が笑顔に満ち溢れていた。
「やるぜぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

「おぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」

一人の男が唸りあげると、全員が正面玄関へと走って行った。
田中と心一は混雑する廊下から一旦、自分たちの房に戻る。
「これからどうしますか?」
「荷物はどこにあるか見当はつく。恐らく、正面玄関の外にある倉庫の中だ。」
「それなら、この受刑者たちに紛れていけば・・・」
田中は心一の言葉に首を横に振る。
「はっきり言って、簡単に成功するものじゃない。だが、そう言ってはいられないな。」
田中と心一は房を出ると、受刑者たちを掻き分けて中央広場に出た。
中央広場では受刑者と看守が何百人も戦っていた。地面にはすでにやられた看守や受刑者が転がっている。
「お、おい!!助けてくれ!!」
田中と心一が広場を駆けていると、看守と戦っている紫苑と美保がいた。
美保は地面に伏せ、紫苑が美保を守るように戦っていた。
「田中さん!!」
「あぁ!!うらぁ!!」
田中は看守に向かって飛びひざ蹴りをすると、そのまま看守頭をつかんで地面にたたきつけた。
3人は田中の戦闘慣れに呆然と見とれていた。
「お前らも来い!!」
田中は紫苑と美保を呼ぶと、4人で正面玄関へ向かった。
受刑者と看守の戦闘を避けながら正面玄関に着くと、正面玄関の前でも数十人が戦っていた。
「どうやったらこの扉は開く!?」
紫苑が田中に聞く。4人の目の前には大きな鉄の扉が立ちはだかった。
「あれだ!!」
田中は周りを見渡して壁に設置されている赤いレバーに指を指す。
紫苑が受刑者と看守を掻き分けながら、レバーを力いっぱい下げる。
すると、ロックが外れ音が聞こえて少しずつ扉が開き始めた。

『正面玄関の扉が突破されました!!!応援を・・・ぎゃぁぁぁ!!!!』

スピーカーから聞こえる看守の声に受刑者たちは大きな歓声を上げた。
「や、やばくないか・・・・?」
「退却!!退却しろ!!!」
看守たちは受刑者たちの力に恐れを感じ、大慌てで退却していく。
「行くぞ!!」
田中たち4人が最初に扉を越えると、目の前には時間が止まって動いていない海が広がる。
そして、その手前に車が一切通っていない車道が見えた。
「心一、あそこだ。」
田中は刑務所の外に隣接して建っている倉庫に向かって走り出した。
心一も行こうとすると、紫苑と美保に呼び止められる。
「おい!!着替えなんてどうでもいいだろ?」
「僕らには必要なんです。」
心一は紫苑にそう言うと、田中を追いかけて行った。
紫苑は美保と顔を合わせると、なんとなく2人について行った。

**********

110号線

刑務所のすぐ前の大通りに受刑者たちは駆けだした。
「外だ・・・・外だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
受刑者たちは再び歓喜の声を上げると、大喜びをした。
しかし、それは一瞬で崩れ去るのだった。

『動くな!!』

突如、受刑者たちの頭上から5台のヘリコプター。
さらには300人の受刑者たちを囲むようにして、武装した治安部隊1000人が銃を構えて現れた。
「なっ!!どういうことだよ・・・・・」
「なんで!?どうして!?」
「ふざけんなぁ!!」
受刑者たちは辺りを見渡すが、逃げれる隙間などなかった。
すると、受刑者たちの目の前に署長である山本が姿を見せる。
「やあクズども。貴様らの考えなど顔を見たらすぐにわかるさ。すべて計画のうちだ。」
山本はそう言うと、受刑者たちの顔を一人一人見ていく。
しかし、田中の顔はどこにもない。
「・・・・これで全員か?」
山本が近くにいた治安部隊隊員に聞く。
「はい。刑務所内の受刑者は全員死亡。残りはここにいる者たちだけです。」
「・・・そうか。」
山本は不満を持ったまま了解すると、改めて受刑者たちの方を見た。
「それじゃあ、みなさん。帰りましょうか。」
山本がそう言うと、治安部隊が銃を向けながら受刑者たちを刑務所に戻し始めた。
山本は辺りを見渡し、受刑者たちの荷物が保管されてある倉庫が視界に入った。
「あそこも調べさせておけ。」
山本が近くのヘリから降りてきた治安部隊隊員に言う。

「いやです。」

「は?」

山本は隊員の言葉に耳を疑い、隊員の顔を見た。
「誰がてめえの言うこと聞くかよ。」
目の前には隊員の恰好をした田中が立っていた。
「お前!!うぐっ・・・・・」
田中は持っていた銃で山本を殴ると、ヘリコプターから吊るされた梯子に掴まる。
「あばよ〜ぉ!!」
「捕まえろ!!ほかのヘリは何をしている?!」
山本は着陸している残りの4台のヘリに向かって叫ぶ。
「ダメです!!燃料タンクが破損して・・・」
山本はその言葉を聞く唇を噛み締めて悔しがる。
「くそがぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
山本は飛んでいく田中たちを乗せたヘリを睨むと、地面に向かって拳を叩きつけた。

**********

一方、逃亡に成功した4人

紫苑が操縦するヘリに乗った3人は見事に脱獄を成功した。
「やったね。田中さん。」
「あぁ。リストもこの通り無事さ。」
4人は荷物置き場で服を着替え、前とは違う服装になっている。
「このままどこに行くんだ?俺と美保はあんたらについて行くぜ。」
「そうか。仲間は多い方が良いしな。よし・・・」
田中はリストを見ると、一番近い選ばし者の住所を探し始めた。
残る難点は、理子と桃子に出会うこと。
心一はヘリから外を見下ろすと、2人の笑顔を頭に思い浮かべ無事を祈った。