ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 〜The stop world〜 ( No.8 )
- 日時: 2010/05/31 22:14
- 名前: ハバネロ (ID: EWcIN/Ij)
【青年の不運な1年】
2012年 8月15日
何年経とうが、年月は永遠に変わらない。理由は時間が停止しているから。
時間が止まってから1年の月日が経つが、人々は平凡な毎日を送っていた。
しかし、東京都内に住む青年だけは違った_____
「心一、ご飯だってさ。」
部屋のドアを開ける、髪が腰まであるスタイルの良い女性は寝起きの顔で言った。
「あぁ。分かった。」
都内の高校1年生、三上心一は姉の仁美の言葉を聞くと、ベットから体を静かに起こす。
心一はカーテンを開け、空を見上げる。毎日同じ空だ。
雲の位置も同じ。毎日天気は晴れ。温度も一緒。
この1年で変わったのは、天気予報が廃止されたことぐらいだ。
「早く下りてきなさい!!」
1階から母の優子が叫んできた。心一は慌てて1階に下りる。
リビングには味噌汁の良い香りと卵焼きの匂いがふんわり漂っていた。
「心一遅い。」
「悪い悪い・・・」
心一は仁美に心ない謝りをすると、椅子に座った。
「それじゃあいただきまーす。」
心一達は箸を手に、朝ごはんを口へ運んだ。
そして、いつもの平凡な日々が始まるはずだった。
**********
一方、同じく東京 世田谷区
住宅街の中に一台の宅配トラックが入ってきた。
「うっ・・・朝か・・・」
トラックの荷台で寝てしまっていた田中は目を擦りながら立ち上がる。
昨日は桐谷と時間管理府の連中に追われて大変だったのだ。
「どこだここは?」
田中は荷台から顔を出し、周りを見渡す。
辺りはいつもと同じ11時の時間帯。いつもの様に晴れている。
「ここは・・・世田谷区か・・・・」
田中はトラックが減速しているのに気付き、迷わずトラックから飛び降りた。
身軽な動きで地面に着地すると、再び辺りを見渡す。
2階建ての同じような家が道を挟んで並んでいる。違うのは屋根の色だけ。
「これからどうすれば・・・・」
田中はポケットにある一枚の紙切れを取り出した。紙には汚い字で住所が書かれてある。
「ここに・・・最初の重要人物が・・・・・」
田中は紙切れを丸めて地面に捨てると、覚えた住所の場所まで走って向かった。
**********
朝ごはんを終え、高校に行く用意をする心一はため息をつきながら用意をしていた。
父の正弘が死んで一年、父親に甘えていた心一には正弘の死があまりにも残酷すぎた。
当時中学3年生の心一は、心から正弘の死を悲しんだ。
それから性格も生活も一変し、今では友人と言える存在はかなり少ない。
「さぼろうかな・・・でもそしたら・・・」
心一は以前、学校をさぼったことがあったが、その時は母や姉の説教で丸2日つぶれることになった。
それも嫌なので、渋々学校に行っている。
「さぼんなよ〜ぉ」
姉が部屋の外からわざとらしく言ってくる。そのまま階段を降りる音がした。
「はいはい。行きますよ、行けばいいんだろ。」
心一は鞄を持つと、玄関へ向かう。
玄関には仁美がスーツ姿で靴を履いていた。
「今日から仕事?」
「そ!!初出勤、警察も結構楽しそうだよ。」
仁美は生前、父の正弘が警察だったので遺志を受け継いだつもりで警察となった。
「二人とも、行ってらっしゃい。」
「行ってきまーす!!」
2人は玄関を出ると、仁美はバス停のある左へ。心一は高校のある右へ曲がった。
登校下校は常に一人。その方が心一にとっては落ち着く。
昔は5〜6人で帰っていたが、正直質問攻めであまり楽しくなかった。
心一はいつもの道を歩いていた。その時だった。
「すまない!!」
「え?」
突如、道の曲がり角から現れた男が心一の腹を殴る。
「あっ・・・・うっ・・・・・・・」
心一はパンチを諸に喰らったせいで、そのまま気絶してしまった。
男の正体は、紛れもない田中栄次郎だ。
田中は心一を担ぎあげる。その拍子で鞄が道に落ちた。
しかし、田中はそのことに気付くことなく、心一を連れてどこかへと走り去った。