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Re: 〜The stop world〜22話うp ( No.86 )
日時: 2010/06/08 19:10
名前: ハバネロ (ID: EWcIN/Ij)

【波乱の始まり】

青森 津軽海峡線

桃子と理子、宮下に湟謎に雅焔は降りてくるヘリコプターを見て歓喜を上げた。
「桃子!!理子!!!」
心一は2人の名前を叫びながら地面に飛び降りた。
桃子と理子は田中と心一の顔を見ると、つい涙を流して抱きついた。
「大丈夫か!?」
田中も降りて、宮下達に駆け寄る。
「あんたが田中栄次郎さんか?事情は聞いたよ。わしらはついていく。」
宮下は田中にそう言うと、手を差し伸べて握手をする。
紫苑と美保も降りると、湟謎と雅焔に駆け寄り笑顔であいさつを交わす。
心一は安堵の息をもらし、9人の笑顔をじっと眺める。
「ようやく・・・全員が集まったな。」
田中は全員を見ると、腕を組んで何度も頷く。
「それで、これからどうするんじゃ?」
宮下が田中に質問すると、田中はヘリの方を振り向く。
「まずは東京に戻ります。都内に残りの3人の選ばれし者がいるから集め、政府を倒す!!」
田中は拳を空に向け、右手を前にやる。
すると、心一と桃子と理子は片手を重なるように田中の手の甲に置いた。
「私もやるよ。お父さんの仇打ちに時間も戻す。」
「私だって。」
「ここまで来たんだ。最後までやるよ!!」
3人の熱い言葉で、紫苑と美保も手を重ね合わせる。
「時間を戻すなら・・・」
「何だってやってやる。」
紫苑と美保の言葉で、湟謎、雅焔、宮下も手を重ねた。
「息子を戻す。わしもやるぞ。」
「俺もついていく。」
「僕も!!おもしろそうだし!!」
9人は中心に手を重ね、円状の形になる。
「必ず、絶対に政府を倒すぞ!!」

「おぉーーーー!!!!!!!!!」

**********

国会議事堂前 庭園

議事堂の前に並ぶ武装した数万の関東治安部隊の目の前には、熊本総理が壇上に上がって演説をしていた。
「我が同士諸君。これより、‘エターナルイレブン計画’第1段階を始動する。」
熊本の言葉に、治安部隊が揃って敬礼をした。
熊本が壇上を降りると、桐谷が悲しそうな顔をして熊本の顔を見る。
「どうした?」
「これは・・・今からやることは・・・正義ですか?」
桐谷の言葉に、熊本は笑顔で頷いた。
「そうだ。市民・・・いや・・・世界のためだ。イコール正義だ。我々で世界を掴もうじゃないか。」
熊本は桐谷の肩をポンと叩くと、そのまま議事堂の中へと戻っていく。
すると、熊本とすれ違いで黒崎が桐谷に近づいてきた。
「余計なことを考えるのは止めなさい。どうせ、もう後には引けないのよ。」
「分かってるさ・・・ただ・・・真実が知りたいだけなんだ・・・・」
桐谷はボソリとつぶやき、トボトボと壇上に登ると前を向いた。
マイクに口を近づけ、冷静に治安部隊に命令をかけた。
「それでは・・・これより・・・・」


東京を襲撃する_________


**********

東北地方 上空

東京でそんなことが起きていることも知らずに、9人はヘリで関東へと戻っていた。
操縦は紫苑から湟謎に変わり、残りの8人で作戦を練っていた。
「一番近いのは茨城だな。そのあとに東京へ行こう。」
「分けた方が良いんじゃない?9人で動くのは無理だし。」
桃子の意見に田中は首を縦に振る。
「そうだな。それじゃあ、俺と桃子と美保に紫苑が茨城。宮下さんと心一、湟謎君と雅焔さんは東京。」
「分かった。」
全員は田中の意見に賛同する。
すると、心一はため息をついて外を見た。
心一の表情を覗きこんだ桃子は、心一の顔色の悪さに気付く。
「心一、大丈夫?」
「あ、あぁ。大丈夫。ちょっと頭痛がするだけ。」
桃子は心一の言葉が嘘だということを感じた。
「うそでしょ?何年一緒にいると思ってんの?」
「ははっ・・・」

バタッ!!

心一は笑いながら突然その場に倒れこんだ。
8人は声をあげて驚き、すぐさま心一に声をかけた。
「お、おい!!心一!!」
田中は心一の頬に手を置くと、異常な体の熱さに気付いた。
「風邪だ・・・かなりの熱もある・・・・」
田中は心一をその場で寝かせると、自分の着ていたコートを心一の体に被せる。
桃子や理子はつらそうな心一を見て不安な気持ちに襲われる。
「病院に立ち寄る暇もない。目的地に着くまでに治ることを祈ろう。」
田中は心一の顔を見ながら言う。
しかし、ヘリコプターだと後1時間程度で着く。その間に熱が引くわけもない。
8人は心一の体を気にしながら、目的地へと渋々向かうのだった。