ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 〜The stop world〜 ( No.9 )
- 日時: 2010/05/24 20:06
- 名前: ハバネロ (ID: EWcIN/Ij)
【序章の幕上げ】
国会議事堂 大堂特別会議室
総理大臣の熊本は逸早く会議室の中で資料を読んでいた。資料内容は時間停止について。
無論、日本政府や他の国の政府は時間を止めておくままにはしない。
どうにかして時間を動かそうと、再び時間を取り戻そうとしていた。
「・・・・滑稽な。所詮は無駄なこ・・・」
「総理。桐谷隊長と草山党首がお着きになりました。」
熊本の後ろから、秘書である男性が伝える。
と、同時に桐谷と時間管理府の党首である草山伸彦が現れた。
「総理、田中栄次郎は逃走しました。恐らくはまだ都内にいると思われますが・・・・」
桐谷が申し訳なさそうに頭を下げる。
「それは君に任せるよ。別に責めやしない。それより今は、『時間』をどうするかだ。」
熊本は桐谷と草山に資料を渡す。
「しかし、未だに時間の停止した原因が分からないとは・・・・」
草山が資料を見ながらつぶやく。
「NASAが1年前から調べているが、理由は不明。どの国もお手上げ状態だ。」
「いつ何が起きてもおかしくない。とにかく、急がねばなりませんね。」
桐谷がそう言うと、後ろから一人の金髪女性が桐谷の肩を叩いて現れた。
3人が振り向くと、そこには九州地方治安部隊の特別隊長である黒崎亜里抄がいた。
黒崎は全身黒のスーツで金髪という映画に出てきそうな容姿だ。
「黒崎、やっと着いたのか。」
「あなた方、何も知らないの?」
黒崎は3人を見て驚愕した。顔をしかめてため息をつく。
熊本はすぐに黒崎に質問する。
「なにかあったのかね?」
「ハイジャックですよ。本当に知らないんですか?」
「ハ、ハイジャック!?」
桐谷と草山はその言葉に呆然とした。熊本も口を開けてポカンとしている。
その時だった。
ピリリリ♪ ピリリリ♪
熊本の携帯が会議室に鳴り響く。
相手が誰かは予想はつく。今知ったのだから。
『熊本だ。』
『そ、総理!!大変です!!JAL東京行きの便が男女計8名の者にハイジャックされました!!』
『8名・・・。彼らは何か要求してるかね?』
『それが、時間を戻せと・・・』
熊本はその言葉を聞いてため息をついた。
ここ1年でそのような事件は多数起こっている。
市民は政府が核実験で失敗をして時間に影響を与えたとでも思っているのだ。
勿論、それは違うが・・・・。
『分かった。今から・・・・ん?その便の番号は?』
熊本はあることを思い出し、ふと質問した。
『Aー1100便ですが・・・』
「本城が乗ってるわ。」
熊本の会話が理解できたのか、黒崎が冷静に言った。
「本城君が乗ってる?・・・そうか。」
熊本は再び電話に耳を近付ける。
『そのハイジャックはすぐに鎮まる。君らは待機しておけ。』
『は?い、いや、しかし・・・・』
向こうがしゃべっているにも関わらず、熊本は携帯の電源を切った。
「本城は欠席確定だな。それでは、全員が集まり次第に会議を始めよう。」
**********
四国・中国地方→→→関東地方の上空
黒崎の言った通り、JAL東京行きの飛行機はハイジャックに遭遇していた。
しかし、それは数分前のことだった。
「まったく。これだからいやなんだよなぁ〜ぁ。」
だらけた口調で独り言をつぶやく一人の男性。
男性の足元には6人の男女が気絶していた。どの人物も無傷で床に横たわっている。
「こりゃあ会議遅刻だな。」
男の名前は本城琢哉。四国・中国地方の特別隊長であり最年少の隊長である。
本城は残りの二人を探すために、再び機内を歩き始める。
乗客は本城の正体を知っているので、かなり安心している様子だ。
時間管理府の人間は今や日本の正義のヒーロー的存在なのだ。
本城がスタスタと機内を歩いていると、残っていた2人の男女がハッチを開こうとしていた。
「おいよせ!!」
本城が叫んだその時だった。
2人はハッチを開き、高度1万メートルの空へと飛び降りたのだ。
本城は急いでハッチを閉めると、その場にしゃがみ込んでため息をついた。
「まったく・・・・ん?」
本城はハッチの近くに落ちていた謎のチップを拾う。
「これは・・・メモリーチップか?」
本城は不審に思い、それをポケットにしまうと席へ戻った。