ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 〜The stop world〜第3部♪ ( No.99 )
- 日時: 2010/06/12 18:32
- 名前: ハバネロ (ID: EWcIN/Ij)
【ついに始動‘エターナルイレブン計画’】
タッタッタッタ!!
心一は田中の背中で目が覚めた。
目を開けると、田中が自分を背負い懸命に走っている。
「いたぞ!!あそこだ!!撃て撃て!!」
心一が後ろを振り向くと、関東治安部隊が銃を構えて容赦なく撃ってくる。
「田中・・・さん・・・・」
「心一!!目が覚めたか!?」
「みんなは・・・?」
心一は辺りを見渡したが、田中以外のメンバーが誰もいない。
田中は息を切らしながら心一に説明を始めた。
「お前が気絶してから、東京に下りて湟謎君が死んだ。それに、東京は悲惨な姿になってる。」
心一はその言葉に、あちこちから聞こえる爆発音で完全に目が覚めた。
なぜ、どうして東京がこんなことになっているのだ。
「政府が本性を現したのさ。急いで決着つけないとマジでやばい。」
田中は脇道に入ると、カーブを何度も曲がりようやく治安部隊を追い払った。
2人はすでに誰もいないコンビニに隠れる。
「東京市民は全員近くの学校に逃げてる。ほかのメンバーはそれぞれの場所に向かわせた。」
「それぞれの場所・・?」
「自宅や思い出の場所だ。ここは、お前の故郷だろ?」
田中の言葉に、心一の頭に姉の仁美と母の優子が思い浮かんだ。
心一は外を見て、空を今も飛び交うミサイルに視線を向けた。
「世田谷区方面・・・田中さん、行っていいですか?」
「一人で大丈夫か?俺は議事堂に乗り込む。」
心一は一瞬躊躇ったが、家族を見捨てることはできなかった。
「家族の無事を確認できたら、必ず向かいます。」
「分かった。気をつけてな。」
田中は心一と握手をすると、先にコンビニから出て行き議事堂を目指した。
心一も裏口から出ると、そのまま自宅へと向かうのだった。
しかし、心一は気付いていなかった_______
これが_______
田中との______
最後の会話だということに_________
**********
東京タワー 最上階 特別展望台
荒れゆく東京を見下ろす熊本総理の表情は、不気味なほどに笑顔だった。
「世界征服も夢じゃないな!!鬼塚君!!」
「そうですね。あの、先ほど情報が・・・・」
「なんだね?」
熊本の表情は一変し、突然冷酷な顔つきに変わる。
鬼塚は熊本の顔を見て恐怖を感じたが、思い切って方向を始めた。
「先ほど、一機のヘリコプターが突っ込み議事堂に突っ込み大破しました。」
「なんだ。そんなことか。」
熊本は国会議事堂が破壊されたことに関心を持たず、なぜか安堵の息を漏らした。
鬼塚は首を傾げ熊本に質問する。
「何も思わないのですか?」
「君は黙って私といるんだ。いいな?質問はするな。」
熊本はそう言うと、横に置いてあるワインをグラスに注ぎ飲み始めた。
鬼塚は‘エターナルイレブン計画’が一体どういうものなのか見当がついていない。
ただ、こう言われたのだ。
「時間を戻すためだ。」
時間を戻すために結成されたのが時間管理府だ。
時間管理府に就いているなら、その計画の成功を信じ任務を全うするだけだ。
鬼塚は壊れゆく東京を見ると、静かに目を閉じた。
***********
世田谷区
久しぶりに自分の住む地域に戻った心一は、呆然とした表情で住宅街を見つめていた。
自分の家がある住宅街は、ミサイルが何発も落ちた後で黒い煙や炎があちこちで上がっている。
「そんな・・・・」
心一は荒れ果てた住宅街に駆け込むと、周りを見渡しながら自宅へ向かう。
「うっ・・・・助けて・・・・」
「ママ!!!パパ!!!」
「私の息子を知りませんか!?誰か!?」
両親とはぐれた子供。血まみれになりながらも自分の子を探す両親。
地面に倒れる何人もの見覚えるのある近所の住民。
心一は今見ている光景が現実と思えなかった。
これが東京なのか?
それが頭の中でグルグルと回り混乱する。
悲惨な光景を見ながらも、心一は自宅の前に着いた。
しかし、そこに心一の家はなかった。
屋根に大きな穴があき、2階からは炎の火柱が上がり、一階は黒い煙で埋め尽くされていた。
「冗談だろ?母さん!!!姉ちゃん!!!」
心一は外から叫ぶが、聞こえるのは炎の音だけだった。
涙を流し、その場に崩れ落ちる。
その時だった。
「し・・・いち・・・・」
微かだが、どこからか母の優子の声が聞こえた。
「母さん?」
心一は自宅とは反対方向を振り向く。
するとそこには、かべにたたきつけられ頭から血を流す優子が倒れていた。
「母さん!!母さん!!」
心一は急いで駆け付けると、優子の頭を優しく撫でる。
辺りを見渡すと、野菜や割れた卵が散乱していた。
見る限り、優子が帰宅した直前にミサイルが落下したようだ。
優子は笑顔で心一の手を掴むと、両目から涙を流した。
「心一・・・会えてよかったわ・・・・」
「何言ってんだよ・・・母さん・・・・」
優子はそう言うと、心一の手を掴む手がスルリと地面に落ちた。
そして、心一はその瞬間に感じたことのない絶望感と悲しみに襲われ、大声で泣き叫んだ。
両親を失った。まだ高校生の子供には辛すぎる運命だった。
だが、それでも心一を襲う悲劇は終わらない。
この戦いは、まだ始まったばかりなのだ。