ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 【時々激グロ】他自殺志願 ( No.10 )
- 日時: 2010/05/30 00:38
- 名前: 笹絹 (ID: LYNWvWol)
起きたら口が鉄分臭かった。
やっぱりだ。
血反吐吐いてやがる。すっぱい。なんだか口が酸っぱくて酸っぱくて。あと今日は足の小指の爪が剥げてた。
剥き出しの薄ピンクの肉からわずかに血液が滲み出ている。
これで全部剥がされたらちょっと恥ずかしいかも・・・。
血反吐の原因。
お恥ずかしながら無意識で首を絞めていたらしい。さすがに苦しかったのか、起きた。
部屋を見回すと裕理さんの姿はなかった。頭痛も薄れてきて喉の痛痒さもなくなっている。体を起こして頭の横にある金属製のボール口の中に溜まった血を吐くとそれを持ってベッドから降りる。
靴下の消失。
爪が剥がされた方の靴下が消えた。
床がひんやりしてる。
「よぉ、元気そうだな」
「相変わらずの元気です。お生憎さま、先輩は骨折ですか?」
「打撲。自転車乗ってたら思いっ切り電柱に衝突した」
「先輩らしいですよあはは」
ソファーには裕理さんの代わりに佐藤先輩がお目見えしていた。
電柱に衝突とか・・・笑える。
よかったのがあちらから足とかボールの中身が見えないこと。
随分こいつは表だと強がってるくせに意外と気が弱くてヘタレらしい。鼻で笑ってやるとムッとした顔をして僕に背中を向けた。
その隙を見て僕は血反吐を配水管に直接流した。
こんなのが川をそのうち下ると思うと笑いが出てくる。
知らず知らずに先輩が再びこちらを覗いていた。
「なんですか?嫌味?」
「黙れ、いや何流してんのかなーって思って」
「先輩には関係ないことです」
佐藤先輩に見せる精一杯の侮辱の笑顔を見せると相手も相手で“グー”の親指を下に下ろした。
「佐藤くん?」
「あ、先生!打撲なんですけど・・・」
「あれ、じゃあこれでも当てといて」
保健医の宮が戻ってきた。
先輩が症状を保健医に伝えると宮は手早に冷凍庫から氷が入ったと思われる袋を取り出し彼に差し出す。
もう少し対応をしてほしそうな表情を見せながらそれを患部に当てていた。
「ちょ、今日は爪剥ぎと血反吐ですか」
「いやー・・・小指触ったら爪が消え失せているもんでね」
「で、裕理ちゃんは?」
「教室ですかね、わかんないです」
小声でそんなことを話していると噂をすればなんとやら、裕理さんが扉を開けてやってくる。佐藤先輩に愛想良く会釈をした彼女はこちらへ向かってきた。
足と血のついた口元を交互に見ながら彼女は心配そうに、だけれどなんだか安心したように言葉を発した。
「大丈夫?痛くない?」
「あ、ありがと。すーすーしてひんやりびりびりするくらいだよ」
「それなら、良かった」
僕の口元を彼女は自らのハンカチで拭ってくれた。女の子らしい兎のキャラクターが顔を覗かせたドット柄のハンカチ。
申し訳なくてそれを彼女の手から外すと恥ずかしそうに『ありがとう』とだけ返事をして宮の方へと向かった。
そんな僕らを恨めしそうに睨んでいる佐藤先輩。
「何です?」
「なんでお前ばっかし美人と・・・」
「先輩に積極性がないのが悪いだけですよ?文句はほどほどにしてくれません?」
上から目線で言うとしぶしぶ引き下がる先輩。相変わらずのヘタレっぷり、使える使える。
で、すーすーひんやりびりびりする小指の処理をどうにかしなければいけない。手に握ったハンカチをポケットに突っ込むと足の指を動かした。
適当に消毒液をかけて大きめの絆創膏を巻く。所詮爪。どうせ何年か後にはすぐに復活するはず。
片方裸足という怪しげなファッションで適当にスニーカーに足を突っ込んで宮と裕理さんの元へ走りよる。
「お前さ、何回血反吐流すなって言った?」
「別に人目にさらされるとか汚れるとかそーいうわけじゃないしいいんじゃないですか」
「川の魚に申し訳ないだろ」
「知りませんよ」
そんな会話を宮と繰り返していると隣の少し低い位置から裕理さんがくすりと笑った。