ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 【時々激グロ】他自殺志願 ( No.16 )
- 日時: 2010/05/30 00:44
- 名前: 笹絹 (ID: LYNWvWol)
「すみません・・・癖みたいなんです・・」
「あ、そうなの?ごめんね、止める気は無かったんだけど」
「いやいや、絞めてたら死んでまし・・・?」
ふと廊下の向こう側を覗くと、何かが動いているのが見える。
僕の首に触れていた雛乃さんの顔を見上げると彼もその向こう側を見据えていた。
徐々に近づいてくるそれ。なんていうか怖い、でも雛乃さんは相変わらずの笑顔で見てる。
「あの・・・」
「別に普通な人だからさ、心配しないで、襲われたりしない」
人?と思いもう一度それを見てみる。
人だ。うん、人だ。カツカツという靴音が徐々に近づいてくる。目を凝らすと男、ということに気がついた。
もう少し、のところで隣の雛乃さんが声を張り上げて歩いてくる彼へ話しかける。
「なぎー?帰ったなら声くらいかけてよ」
「すみません、遅くなりました。ただいま帰りました、沙紀さん」
“なぎ”と呼ばれたその青年は雛乃さんと挨拶を交わしあいにっこりと微笑んだ。なんなんだろう、他の研究員とか隣の女の子とかと態度が違う。優しいというか、なんというか。昔からの旧友との交わし合いというかなんというか。
雛乃さんは簡単に彼の説明をしてくれた。
“なぎ”と呼ばれていたのは名前が“汀”、“なぎさ”と読むらしい。比良澤汀。ちょっとした事情があって匿っているようだ。その、“訳あり”らしい。
ハンチングハットを被り左目が髪の毛で隠れている。顔は随分なイケメンっぽい。シンプルなハイネックの上に灰色地のベスト。
彼は僕のことを見つけると帽子を取って会釈をする。
「初めまして。比良澤汀です。よろしく」
何が訳ありなのか分からないが、見る限りではいい人っぽい。いや、普通の優しい青年じゃないか、顔も結構いいしさ。
「阿久津進です。初めまして」
すると雛乃さんが彼の耳元で何かを囁いた。汀さんもコクリと頷き僕に向きなおって『じゃあまた今度』とだけ言ってその場を去った。
「そのうち彼がなんなのかわかるから。あと君に話したいことがあるから歩きながらでも」
「え、あ、はい。了解です」