ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 他自殺志願 ( No.5 )
日時: 2010/05/24 22:12
名前: 笹飴 (ID: LYNWvWol)

そろそろ裕理さんが迎えにきてくれ・・・
「進くん・・・?大丈夫?」
「ごめんね、心配かけちゃって」
いつもの決まり文句の交換。裕理さんは別な言葉を期待しているようだったが語彙のない僕にはそんなの瞬間的に思いつかないよ、ごめんね。裕理さんは学級副級長。まぁようするに仕事が押しつけられやすい立場の役職だ。そんなところで迎えにきてくれているようなのだが、竣は心配していないのだろうか、まぁしょうがないか・・・運動部で忙しいしな・・。
「・・・進くんは、血とかを見ても怖くないの?」
「まぁ日常茶飯事の行事になっちゃったしね、でも“自分のものだっ”って思わないと吐き気が口の中でぐーるぐる」
ジェスチャーをしてやると彼女は手を口の前へ運び、くすくすとかわいげに笑った。
前々から不思議だったのだが、裕理さんこそ血は怖くないのだろうか、いつも自分の生々しい傷口とかを見ても怖がらないし、あ、たしか親は解剖医師とか言ってたね。あーじゃあもっとエグいの見てんだ。じゃあ平気かもねー
知らず知らずに赤く染まっていたシーツは元の白さを取り戻していた。わざわざ保健医が気を利かせて買ってくれた僕専用のシーツ+布団&枕セット。それが仲良く回っていた。またこれも僕専用の洗濯機は乾いた血液がいろいろなところにこびり付いて粗大ゴミ状態になっていた。
先日にそれを綺麗に拭き取ってくれたのも彼女、裕理さんだ。
最初は柔軟材を1パック全部投入してしまったときも優しく教えてくれたし、まぁ結果は隙間から赤い泡がぶくぶく外へ進出していたことが問題になったが・・・。


今だって手首に器用に包帯を巻いてくれている。
血は止まりつつあって彼女の暖かい手のぬくもりが冷たく冷えた死体状態の右手首に心地よかった。
「これで、いいかな」
ポンと処理後のそこを叩く裕理さん。
「有り難う、本当にいつもごめんね」
「ううん・・。あ、そろそろ陽がくる頃だね、あと48秒・・・」
せーのでカウントを始めた僕と裕理さん。子供みたい、お互いで笑いがでた。
「裕理!?と進くん!?大丈夫!?ちょっと、なにその手!進くん!」「有り難う、少し手が滑ってね」
「そうそう、気を利かせてリンゴの皮をむいててくれたら手首にズバっと・・・」
「裕理、表現どうにかしない?」
あははと三人で笑いあう。
リンゴ?と思いソファーとソファーの間におかれた丸いテーブルを見ると可愛くうさぎ切りされたリンゴさん達が無言で宙を見つめていた。


フォークでそれの一つを刺すと溢れんばかりの果汁が溢れてきた。