ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 他自殺志願 ( No.6 )
- 日時: 2010/05/24 22:16
- 名前: 笹飴 (ID: LYNWvWol)
「リンゴうまー」
と僕等で叫びながら(裕理さんも含め)部活へ向かう。
自分は体力ないくせに弓道部。
小さい頃からやっているのでこれだけは得意だ。寝たとしてもこれだけならなんとかやっていける。
あのピシっとした弓道着が肌になんだかとても心地よくてこれを着ると普通の自分に戻ったような感じになる。
裕理さんは華道部で陽は女子バレー部、竣は男子テニス部。
ちくしょう、と思ったのが竣でここの男子テニス部は『よっ!イケメン!』と声がかかるくらいイケメン、イケてるメンズが多いのだ。
それに馴染んでやがるあいつが色々と妬ましい。
バレー部の特徴・・・。
大会のときのふとももがイイ!ってクラスの男子に散々唱えられた覚えがある。知らんがな。
華道は・・・よくわかんない。
花を針山にブスブスさしてって・・・もういいや、知らん。
針山を踏んで全治一週間とかやった先輩がいるって話を聞いたくらいだ。
「進」
「あ、先輩?どうかしました?」
「手首・・・平気?」
「あー、全然平気なんで気にせんでください」
冗談のようにおどけて手をぶらぶらと振ると先輩も安心したような表情になって僕の頭に手を置いてくれた。
「お前はさ、次期エースとかどうとか言われてんだからでっかい怪我とかすんなよ」
「大丈夫です!目玉とか抜かれなければ平気ですから」
「そんなことあったら事件ものだって」
先輩は櫻井和樹、一応エースっぽい。
なんだかこの人に弓道部入れさせられた・・みたいな感じなんだけど、今になっては頑張れるものとなってる。
ここでは寝ることも滅多にないし集中できる。いいもんだ。
で、和樹先輩も含め、陽やその他の生徒は僕が誰かに一歩間違ったら死亡レベルの傷を負わさせられているという事態は知らない。
唯一、知っているのは裕理さんくらいだ。
なんで裕理さん・・・?そりゃ、あんなおどろどろしい血液を目の当たりにしたって平然な笑顔でいられるくらいの人間だ。
普通はグロテスクな傷口とか肌に走らされた赤い直線なんか見たら失神するか吐くかどっちかだろうし。
「次」
僕の番らしい。
思考を・・・・集中・・・
バコンという音と共に的の中心に矢が突き刺さる。
あー危なー
手元がズレた。死ぬかと思った。
知らず知らずに後ろからは拍手喝采、だった。
心地悪くはない、素直にこれはけっこううれしい。みんなだって誉められたり崇められたりしたらうれしいもんね!
これは毎日やられても飽きないよね、うん。
いつも通りに最後の作法も終え、後ろにつく。
「ねね、先輩」
「?どしたの畝那くん?」
「手首・・・平気なんですか?無理してるようにしか・・・」
「平気平気。ちょっとした怪我だから」
畝那、せなって読むっぽい。
最初の感想、すげぇ名前・・。
でも名前で想像していた性格とはまったく違ういい子で温厚な子だった。いつも怪我を気遣ってくれるし、お菓子くれるし。
腕もそこそこ、悪くはない方っぽい。部長でもエースでもない僕が言えることではないが見てる限りでは上手なほうなんじゃないかなー?と思う。
心配そうに見上げている畝那の頭をわしわしと撫でてやると子猫のような可愛げな笑顔をつくり、微笑んだ。
いい性格+顔もいい。なんていう完璧な・・・。
いやいやいや、今は選手に意識を向ける時間だ。
畝那についてはまた今度語ることにして・・・眠い・・・。
帰路。
あのときの眠気はただの睡眠不足だったようだ。
どこがどう自分でも睡眠不足かどうかわからない。膝枕状態で畝那に倒れなかったことを感謝しよう。
ケータイを開くと画面下のテロップが焦ったようにニュースをころころこちらへ伝えている。
“女幼児誘拐、これで8人目”
物騒な世の中になったものだ。
自分のような男子高校生を狙う変態なんて聞いたことがない。
ロリっ子ばかり誘拐・・・あ、最近はショタっ子までいなくなり始めたんだっけな、おーおー大変大変。
小さいのにレイプさせられて殺されるとか・・おいおいさすがに可愛そうだって・・・。まだ社会も知らない小さな子供が大の大人に身体中を舐め回されて最終的には・・・。
ごめん、なんだか殺された子に申し訳なくなってきた。
ふとテロップに目をやるとまた別なニュースが更新される。
“バラバラ殺人・・・”
もうなんだかだるい。バラバラがなんだよこっちなんてそんな思い毎日させられてるんですけど
が、一つだけここ最近のバラバラ殺人でネックになるところがある。
“頭が必ずない”ということ。
それ以外は埋められてたり、ジュース状やゼリー状にさせられて排水溝に流されてたりカモメが肉をつついてたり。
でもどこを探しても“頭”だけが見つからない。
それに死体には指紋一つ付いていないらしく何も判定できないらしい。これが現在の日本事情だろうがなんだろうが僕には関係のないこと。
頭がうつらうつらしてきた頃に自宅が視界の端に見えてきた。
鍵は最新式の指紋探知なので手のひらを翳すだけで通ることができる。夕方になるとホームヘルパーさん・・・?家政婦さんが来てくれるので夕飯などはあらかじめ親切に作っておいてくれる。
「おかえりなさ・・・またお怪我を・・・」
「寝るから・・時間には帰ってね・・」
この状態で精一杯の笑みを浮かべながら家政婦に返事を返すと彼女はにっこりと頷き台所へ歩いていった。
自室へ入るとやはり弟の姿はなく・・・机には一切れの紙。
内容は彼からのものだった。
“今日は怪我平気だった?”少しの交流でも、少しでも心配してくれていると思うと、不安な気持ちはすぐにどこかへ吹っ飛びほんわかした気持ちになる。
それを丁寧に畳んでポケットへ滑りこませる。
あ・・・れ?まだ僕ベッドに行ってな