ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 嘘の蒼 ( No.10 )
日時: 2010/06/17 16:52
名前: 狼華 (ID: 1/l8DPvU)

第三話 不完全別〈ふかんぜんのわかれ〉

「・・・・っぅ・・・・」

 目をゆっくりと開く。
 視界はぼやけていて何が何だかは正直言ってわからない。
 ・・・ただ。
 ここは俺たちの知らない寮。
 そして。
 嗅ぎなれない鉄のような匂いが立ちこめていること。
 ・・・・・・・・・・・・・・凜華と耀介はっ!?
 なれない暗がりの中を手探りで必死に探す。
 ・・・・・・・・・・・・・・ん?
 急にふわりとした何かに触れる。
 「凜・・・華?」
 「・・・・もしかして新君?」
 聞き慣れた声が鼓膜を揺らす。
 優しい彼女の声は暗闇の中でとても明るく聞こえた。
 ・・・なぁんて言い過ぎか?
 「新!心配したんだよ!」
 彼女の声に重なるように低い耀介の声が重なる。
 後・・・・一人。
 心配で仕方なかった。
 まさか今朝のあの後ろ姿が最後になるのでは。
 あの落ち着いた声が聞こえなくなるのでは。
 心配しすぎか・・。
 いくつものKSをあいつは体験している。
 大丈夫。
 「新は大丈夫?怪我とかしてない?」
 耀介がぽふぽふと俺の頭をなでる。
 「あぁ・・・・」
 力の抜けた声で答える。
 大丈夫とは思うもののどこか心の隅では不安が渦巻いている。
 「ねぇ・・・・」
 急に凜華の不安げな声が聞こえる。
 「どうしたんだよ?凜?」
 「悠一君って9183だよね」
 ・・・・?
 「そうだけど・・・?」
 ・・・・・まさかっ!?
 「この手って・・・・」
 凜華の指さした方向を見る。
 カーテンの隙間から見えたのは

   血だらけになりだらりと力なくたれた腕。
  その手首には      「9183」としっかり刻まれていた。
     間違いない
            大好きな親友。
  悠一の腕だ。







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