ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 嘘の蒼 ( No.4 )
日時: 2010/06/04 09:41
名前: 狼華 (ID: TPJwhnvu)

第一話  平並凡悩≪へいへいぼんのう≫上段

「世界は虚構だ」
 ・・・・ぶっちゃけた話。俺はこの間もこの話をルームメイトにした。
 ルームメイトの頭が悪かったおかげで理解されないで済んだ。
 俺は自分をさらすのが大嫌いだ。
 正確にいえば人を信じるのが嫌いだ。
 ああ、すまない。
 こんな話聞いててもつまらないよな。
 ・・・眠い。今日は冷えるな。
 もう少し寝よう。
 また・・・・・明日。
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 「悠一!起きろ、食べちゃうぞー!」
 五月蠅い・・・・。
 俺の朝はルームのメイトのデカイ声で始まる。
 ・・・正直耳が痛い。
 「うるせぇ、誤解されるような起こし方すんなバカ新」
 「いいじゃぁん☆起きないのが悪いんだし俺は悪くないっ」
  ・・・・・・はぁ。
  ルームメイトもとい劉漸 新〈りゅうぜん あらた〉。こいつは何だか自然に俺に着いてきていた。
  俺も正直言ってこいつにだけはすべてを晒している。
  まぁ、こいつは軽いようにみえて結構硬派なやつ・・・ということが証明されているからでもあるが。
  「ほれ、点呼始まるから行くぞ」  
  「ほいほーい」
_______________________________
  「劉漸 新!」
   「はいー。」
  「炎谷 悠一!」
   「はい」

                         「以上!今日も各々の持ち場に着き健全な肉体を作り上げること!」

 
     かったるい。
  これだけを聞いているとまるでどこかの軍隊のようだ。
  ここはただの研究所なのに。馬鹿馬鹿しい。
  
  ここだけの話。俺は裏があるんじゃないかと思う。
  裏というかなんというか。
  研究所にも俺にも。
  裏というものは付き物だから。
 「炎谷!」
  ・・・何だろうか。
 「何でしょうか」
 「今日は第5棟に行きKSをうけること。いいな」
 「はい」
  ・・・よりによってあそこのKSか。
  KSというのは研究切開の略だ。
  どうも最悪な研究なので被験者の間では「カス」と呼ばれている。
  ・・・・・・・・・いまなら本気で死ねる・・。
  カスの中でも一番受けたくないのが今日行く第五棟のものである。
  第五棟のやつらはどうも頭がシンナーでどろどろに溶けているのではないかと思うやつらしかいない。
  「悠一どんまい・・・・」
  後ろから控え目な声で大柄の男が話しかけてくるという些かシュールな光景が広がる。
  「耀介か・・・。びっくりさせないでくれ。・・・まぁ頑張るさ」
  紺瑛耀介〈こんえい ようすけ〉。この研究所で最強と恐れられる男だ。
  普段はこのように控え目な性格なのだが・・。
  「ねぇ」
  不意に横から声をかけられる。
  「頑張ってね、悠一」
  「り、凛華・・・」
  このいかにもおとなしそうな少女、風並 凛華〈かざなみ りんか〉。いわゆる彼女だ。
  「新君は今日一日トレーニングらしいから」
  ・・・・聞いてもいない情報だがそれを聞いて内心ほっとしていた。
  新もつらい目にあってるのか。
  こんなことでほっとするとどこか罪悪感に苛まれる。
  ・・・・・・・・・・・よし。覚悟しよう。そうしよう。
  「そうか」
  「だから悠一も頑張って」
  「帰ってきたらゆっくりトランプでもしような」
  十人十色・・・とまではいかないが多種多様なあいさつで俺は送りだされた。



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