ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ソウ・ライド ( No.1 )
日時: 2010/07/13 14:03
名前: ヨシュアさん ◆FdjQaNCWZs (ID: bQobMYPz)

プロローグ —クロウサギ—

これはゲームだ——。

敵を滅ぼすゲーム——。

veilを滅ぼすゲーム——。

クロウサギは今日も来る——。白い月が無い黒い天の下のもとに——。

クロウサギは今日も跳ねる——。双大鎌を携え、獅子をも目で射殺してしまうほどの殺気を携えて——。

そして、黒い兎は無風の荒野を——駆ける。

目の前に迫るのは四匹の狼。
クロウサギは飛び上がり狼たちの真上まで到達。その瞬間に二匹の狼が襲いかかろうと上へ飛び上がってくる。一匹は噛み付こうと鋭い犬歯を覗かせ、もう一匹は鋭利な爪で引っ掻こうとしている。クロウサギは一匹の狼の上顎を踏み台にし、捉まらないよう、もう一つ高く飛び上がる。踏み台にされた一匹は地面へと突き落とされ、もう一匹は爪が届かずに、自由落下していく。クロウサギは宙を舞った。黒雲に隠れていた白月が出現する。月に照らされるその姿は黒い兎……。空中で二つの大鎌を構え、そして……クロウサギも自由落下していく。下で兎を見上げる四匹の狼はこのときを待っていたかのように、同時に襲い掛かってくる。クロウサギは迷わない。一匹目はのど笛から引き裂き、首を切り落とす。二匹目は口から体を裂いていき、真っ二つにする。三匹目は脳天を割り、四匹目は背中から、一気に致命傷を引き裂く。そして、クロウサギは大地に降り立った。遅れて落ちてきた血と肉塊は地面を染め、何も無い大地に彩りを与えた。 

クロウサギはその赤い眼で白い月を見上げる。ただ一人のことを想い、そしてその人に会いたいと願って——。

白い月光は孤独の兎を照らした——。
黒い兎が闇に紛れぬよう、闇に隠れぬように、孤独なことを思い出させるように——。

白月は照らし続けた——。