ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Ravinalog γブラック・ラビットγ ( No.4 )
- 日時: 2010/06/23 06:02
- 名前: ヨシュアさん ◆FdjQaNCWZs (ID: bQobMYPz)
第二話 —リィハ・スカイリトゥーネ—
ドアを開けた向こう——そこに居たのは二人の少女だった。
一人は淡い青髪のポニーテールに粟色の大きな瞳が特徴的な、明るそうで、どこか幼げな雰囲気がある少女。
もう一人は少し伸ばした白いショートに、誰かを魅了するためにあるような綺麗なスカイブルーの瞳。立っている姿勢に何となく優雅さや気品さを感じる。少し不思議な雰囲気を纏った少女。
どっちも黒兎との歳の差は無さそうで、白いショートの方が一つ上に見える。騒がしそうな少女と物静かそうな少女。そんな対照的な二人が同じ学校の制服を着て、刃音 黒兎の部屋の前に並んで立っていた。
「あんたら、誰?」
俺の短い言葉に
青髪の少女が握った拳を天に打ち上げて、元気良く答えた。
「あたしたち、生徒指導委員会なんだよ! 今日は、はつしごとぉーー!」
無駄に元気で明るい高らかな発言の後に、一息置いて横に居た白髪の少女が口を開いた。
「私はリィハ・スカイリトゥーネといいます」と自己紹介しながら、少女は軽い会釈をした。これにも少し上品さが感じられる。
その後に「彼女は日向 日和さん」と言いながら、隣りの少女も紹介される。
右の奴……無駄に元気だな……。俺が苦手なタイプだ。
「で、その生徒指導委員が何のよう?」
無駄に元気を持て余してる方、五月蝿い方の日和が口を開けかけたが、リィハと名乗った少女がそれを手で制した。
「当然、あなたを学校に登校させるためです。そのために私達が来ました」
登校……? 学校にか?
俺はそう憎々しく、心の中で呟いた。
「馬鹿言うな。誰が行くか」
俺は吐き捨てるように言った。
「まぁ、そんなことを言わずに……」
リィハはそう言うと、俺の許可も得ずに、俺の部屋へと勝手に入ってきた。
「お、おい……!?」
彼女、リィハはダーツが的に当たるように部屋のど真ん中で止まると、俺の小汚い部屋を一瞥し、こう言った。
「それはそうと、黒兎さんは……『Ravinalog』をやってるんですよね?」
『Ravinalog』——。
世界最高峰のオンラインネットゲーム——。
俺が俺でいられる世界——。
「あ、ああ……そうだが?」
誰もがやってるゲームだ……。聞く必要が無いぐらいに……。
なのに何故、こいつは聞いてきた?
「だったら、間違いないようですね」
リィハは目を瞑ると、意味深に一つ頷き、言った。
何が……。
「…………?」
一緒に来ていた日和という奴はわけがわからないという感じで、純粋無垢な子犬のように首を横に傾げていた。
「お会いできて光栄です——クロウサギさん——」
俺は動揺を隠せなかった。隠せるはずが無かった。
「またの名を“ブラック・ラビット”」
「な!? ……何で、俺が……クロウサギだってことを知っている!?」
リィハは窓まで近づくと、当に朝日とは呼べそうにない日差しを細めで見つめていた——。
その光景は神へと召される天使のようだった——。
俺は口が無くなったように、ただ静かにその光景を見つめる——。
静かになった部屋。後ろの日和という奴も同じなのだろう。さっきとは違い息づかいさえ聞こえない。
天使はゆっくりと綺麗な唇を動かし、口を開いた。
「それを知りたければ——」