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Re: 人、人、人。 02up ( No.8 )
日時: 2010/06/06 19:28
名前: 煌謎 ◆vBOFA0jTOg (ID: 3r6DhwLS)

▼Scene02 「僕の居場所」

「お、帰ってきたか」

アジトに帰ってきた僕等を待ち構えていたのは、僕等の大将、冦鎖であった。
そして彼の隣に居たのは、仕事仲間の乙霧と匡である。

僕等が無事帰ってきた事に、一同の顔が思わず綻ぶ。
しかし、僕等のびしょ濡れ状態である事に気付くと、顔を歪ませてしまった。

「如何したのよ。其の格好」

「いや、仕事中に丁度雨がきやがってな。 其れで此の様だ」

湟謎が僕の代わりに匡にそう説明すると、彼女は怒り混じりの表情を浮かべて僕に詰め寄る。
そして、雨では洗い流せなかった頬に付いた血を綺麗に拭き取ってくれる。

「シャワー浴びて来なさい。報告は其の後で良いわ」

匡の指示に僕等は黙って訊く事にした。
彼女に何か言われても、何時も何かと反論できないのだ。


++++

「いったァァァァ!! 沁みるっ沁みるゥゥ」

少しシャワーを身体に掛けた途端生じた痛み。
掠り傷の存在なんて忘れていた僕は 涙目になりながらも我慢した。
以前の仕事で出来た掠り傷なんて、とうに治っているものだと何処かで思っていたのだ。

「死ぬ……」

じわじわと広がる痛みに堪えながら、シャワーを浴び、未だ身体に纏わり付いている血を流す。
ごしごしと身体を擦るが、血の臭いは一向に消えない。

僕に染み付いた此の臭いは、もう既に僕の臭いと化していた───

++++


「……で、今回の依頼は如何やったん?」

シャワーを浴びた僕は今、血の匂いを弱める為の香水を自身に振り掛けている最中、乙霧が僕に問い掛けてきた。

「くせぇ」

と呟く湟謎を無視して、僕は報告する。

「今回の標的は望月 拓未、22歳の男。図体がでかくて強いかと思ったけど、大して強くなかった……以上」

冦鎖は怪訝そうな表情で僕を見て




「其れが報告なのか?」




と言い放った。
僕は低くなってる冦鎖の声に、一瞬驚いたものの、直ぐに表情を元に戻して、そうだよ。と質疑応答した。

「……よし雅焔、報告書自分で書いてきなさい」

指をリビングの出入口に向け、珍しく渋い表情で僕にそう言った冦鎖は、怒りを隠さずにいた。

「はァーい」

其の様子には流石の僕も少し怯み、そそくさとリビングを出ていった。



「冦鎖も人が悪いなぁ。あの雅焔が珍しく吃驚してたやん」

「ん?」

一部始終を見ていた乙霧が苦笑いで話しかけた。








「いーんだ。例え仕事でも、人殺しは軽くないんだ」