ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 人、人、人。 オリキャラ後1人募集中 ( No.27 )
日時: 2010/06/10 00:13
名前: 煌謎 ◆vBOFA0jTOg (ID: aw1kgo/k)

▼Scene05 「雨の音」

  ザァァァァァ…………

大量の雨が僕の身体を容赦無く打つ。
お蔭でで全身ずぶ濡れ。
だが、そんな事を気にする事なく、只僕は廃墟ビルの屋上に腰を下ろしている。


雨はまだ降り止む気配がない。


僕はアジトには帰らず仕事帰りに、此処に寄った。
1人になりたい時は、何時も此処に来ている。

僕の仕事は殺し屋。
生まれた時から僕の人生は物騒な事が多い。

何より此の街は……此の世界はもう狂ってる。
時を刻む事に空は灰色になり、大粒の涙を流していた。
世の中は終わりへと密かに歩んでいた。


暫く其処に座って、雨の酷い音に耳が麻痺する程浸っていた。
手にこびり付いた血が薄まっていく。
汚いもの、全てを流そうとしているように見える。
何も考えず、雨の作り出すノイズに耳を澄ましていた時だった。


突然、屋上の扉が開いた。


入ってきたのは、黒い大きな作業着を着た人。髪は琥珀色で綺麗だが、ボサボサの為そうは思え難い。
其の人はふらふらと覚束ない足取りで、雨の屋上にずぶ濡れになって出てくる。
何となく自分は其の人と何処かで逢ったような気がして、僕眉を顰める。

其の時、其の人と目があった。
と良いたいが、其の人の目は薄汚れた包帯で隠れている為よく判らない。
しかし、視線は感じる。

「……あれぇ、如何したの君ぃ〜?」

雨が煩い中聞こえるであろう声で僕に呼び掛けてきた。
流石の僕も、いきなりだった為、内心驚いた。
如何したの、と言う其の人に逆に僕が訊きたい。

「別に何も」

僕はそう言いながらも、目の前に居る謎の人を観察していた。
見れば見る程、やはり昔何処かで逢ったような気がして仕方が無い。
包帯の小さな隙間から見える、薄い緋色の瞳。
────何処で逢ったんだっけ。


「君ぃ、殺し屋の雅焔でしょ?」

「何で僕の名前、知ってんですか」

益々判らなくなってきた。

「貴方は誰何です?」

訊いてみた。
雨は降る勢いを強める。

「んー? オイラ? オイラは、遊──」

名前を名乗り終える前に、緋色の瞳は閉じられた。
すると其の人は僕の方に倒れ込んだ。
僕は何とか受け止めると其の人の身体は冷えていたが呼吸をしていると判り、生きている事を確認する。

雨に酷く打たれ続けて身体を壊したか。
僕は仕方なく其の人を抱き抱え、仲間の待つアジトに足を向かわせた。


雨はまだ降り止む事を知らない。
アジトまでの道程でもザーザーと降りしきっている。
怪しく曇った重い灰色の空が何処までも続いているだけだった。








「名前最後まで名乗ってから、気絶しろよ重いな」