ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 汝が其処に在るのは愚者の願望 ( No.1 )
- 日時: 2010/06/05 10:35
- 名前: みるくちょこれーと (ID: zuIQnuvt)
プロローグ
誰かが言った。
“これ”は神によって定められていた事。絶対的運命。抗うことは許されない。我々にそんな権利など持っているはずも無い。抗えば“愚者”と化すであろう。我々はただの人形。神の玩具——いや塵屑。それぐらいの価値しかない。わかるか? ははは、御前には分かるまい。御前はまだ小さいのだから。このことを覚えているはずも無かろうよ。いいかい? これを理解してはいけないよ。誰かに話してもいけないよ。殺されてしまう。同じ人間ではない何かに。神の遣いに。私はいいのだよ、殺されやしない。御前を守ってあげる。一生、一生守ってやろう。私はタヒなない。約束する。絶対だ。この約束は神にさえ破れない固い約束だよ。これだけは覚えておいておくれ。
————。
そう言って、貴方は俺の名を呟き何処かへ行ってしまった。遠い、遠い、遠い何処かへと。俺の知らない土地へと。そういえば、俺は貴方の名をまだ聞いていなかった。ああ、聞いておけばよかったなあ。そうすれば、俺も貴方を覚えていて、覚えていないことも思い出せていたかもしれない。
——なんて、今更こうして立ち止まって、過去のことを悔いても仕方が無い。結局は時間の無駄になる。俺は進まなければならない。貴方を見つけるため。俺の過去を思い出すため。失ってしまった“何か”を再び手中に収めるため。
その為なら、俺は何でもする。運命に——神に抗ってさえも手に入れてやる。これは禁忌。絶対やってはいけない事。そんな俺を見て自分勝手だと、哀れだと、自惚れているとでも何とでも思うがいい。俺はそれでも構わない。
例え、“貴方”と相対することとなっても。
◆◇◆◇◆
——我願うるは汝の幸福。汝願うるは我の導き。
開くは愚者の扉。其処から聞こうるは愚者の嘆き。
何と愚かで儚く汚らわしいのだろう。
我は望む。神の降臨を。汝は望む。人々の自由を。
嗚呼、神に愛されし愚者の餓鬼よ。汝の力を望もうぞ——
※サンガイズ第一聖書から十五頁一部抜粋。