ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

act.2 ( No.5 )
日時: 2010/06/15 17:46
名前: 時代 (ID: GUpLP2U1)

「……随分と、派手にやったもんだな」

その声に驚いて聞こえた方向に目を向ければ、そこには僕と同じ位、そして声の主なのだろう一人の少年がいた。
癖のついて所々で跳ねている焦げ茶色の短髪に髪と同じ色の瞳。呆れたような、悲しんでいるような色を湛えたその少年は、その表情を無表情にすると僕へと、……嫌、僕の目の前にあった死体へと向かって行き、僕の向かい側で立ち止まってぽつりと言った。

「……お前が、やったんだろ?」

act.2

質問の意味なんて、言われなくても分かっている。
何だか声を出せば、そんな事はあるはずないのにこの場に呑み込まれてしまうような気がして、無言で小さく頷いた。
そうすると、その人も無言のままで「……俺も、殺したんだよ」と言った。
何を?だなんて、言わなくても分かっていて、何故だか酷く哀しくなって、目から何か冷たいのか暖かいのか分からない液体が溢れてきた。それを「涙」だと認識するのには、少しの時間必要としたけれども。
彼は何も言わずに僅かにうつむくと、「……何だよ、もう」と言って面倒くさそうに頭を掻いた。

「俺、矢崎千って言うんだ」

お前は?と聞かれて、それが僕の名前を聞いているのだと言う事にはすぐに気付いたけれど、やっと出せた声はとても、小さな声だった。

「柚木……士郎」

そんな小さな声でもどうやら彼……千には伝わったようで、彼は小さく頷くと「行くぞ」と言った。

「このままここにいても、仕方がないだろ」

何故だか彼の言葉に引っ張られるように部屋を出たその時の僕は、もしかしたら部屋を出ると無限の闇が広がっていて、一歩でもそこに足を踏み入れればその闇に堕ちてしまうのではないかとどこかで思っていたのだがそんな事は勿論無く(そもそもそうだったら千はここにはいないだろう)、至って「普通」の無機質な終わりの見えない通路が見えた。
その向こうに何があるのか、何て僕には知る由も無い事だったけれど、いくつか枝分かれしていた通路の中で、何故かそちらに行かなければいけない気がして左へと歩を進めると、千もそうだったらしく2人で無言で歩いて行った。

どこか遠くで、銃声が聞こえた気がした。