ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 人物語 -1905日間の放課後- ( No.2 )
- 日時: 2010/06/12 10:56
- 名前: 音暮 ◆KGyV2CsFBI (ID: olAAS3wU)
第一晩 「終戦」
2610年——
第三次世界大戦が終戦を迎えた年。
第二次世界大戦後に定められた憲法第九条。
日本はその“戦争の放棄”という永久の決まりを破ったのだった。
日本は戦力・策力、共に他の国を圧倒していた。
中国、韓国、朝鮮などのアジアの国を圧制したところでアメリカによって日本は敗戦した。
死亡者、推定三千人
重軽傷者、推定五千人
日本の人口はおよそ一億二千人。
その内の半分以上の人間が死亡、もしくは負傷していた。
アメリカと結び直した平和協定。
日本は完璧に敗戦したのだった。
それから三年の月日が過ぎた。
日本の復興は第二次世界大戦後に劣らずの早さだった。
三年という短い時間の間に戦争前と変わらぬ姿を取り戻したのだった。
笑顔で緑の茂る道を走る子供達
手を繋ぐカップル
噂話に花を咲かせる主婦達
日本は完全に復興したと思われていた。
しかし、
それは表面だけだった。
“戦争機械”
この言葉を聞けば誰しも顔を歪める。
唯一の残った戦争の痕。
それが戦争機械。
それは人間と同じ外見で、
同じ言葉を話して、
同じように笑う。
唯一違うのは戦いにおいてかなりの力を持っているという事。
まるで機械のように、
ただただ人を虐殺する彼らを人々は人間と呼ばれなくなった。
戦争機械、とそう呼ばれるようになった。
彼らは戦後一つの場所に集められ殺された、と新聞には書いてあった。
実際は分からないが——
「戦争機械、ねぇ」
ビルの一室、最上階の部屋から若い青年の声が響いた。
金髪の流れるような髪、それに似合わぬ日本人特有の黒い瞳、
着ているのはスーツなんかじゃなくて、黒地に紅い蝶の描かれたTシャツだった。
「なんスか? そんな単語口に出して……」
高そうな椅子に座る金髪の青年に話しかけたのはこれもまた若い青年。
髪はワックスでくしゃくしゃと立たせている。
綺麗な青い瞳を持った青年だった。
「あぁ、ちょっとな。ホントに戦争機械は壊され、いや、殺されてしまったのかちょっと気になってさ」
金髪青年は手に持っていた少し古めの新聞記事を机の上に乱暴に置いた。
「じゃー調べません? 気になることは調べて解決!! 我が会社のモットーじゃないですか」
そう笑顔で椅子の後ろから顔を出した女が言う。
茶髪の綺麗な髪を高い位置で一つの結い上げていた。
「確かに、そうだな。調べるか」
金髪青年は何か企んだように、
笑みを浮かべてそう呟いたのだった——