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- Re: 人物語 -1905日間の放課後- 第四晩up オリキャラ募集 ( No.16 )
- 日時: 2010/06/25 19:06
- 名前: 音暮 ◆KGyV2CsFBI (ID: tVOKPYTM)
第五晩 「始まり」
「ん〜……。まずはお前の自己紹介からだよな」
名残はそう言っておくの部屋へ足を進めた。
「虚空ー!! ちょっと来い」
すると奥から女の子特有の可愛らしい高めの声が聞こえた。
「今行くー」
パタパタとした足音、そこには綺麗な茶色い髪を二つに結った、自分と同い年ぐらいの少女が立っていた。
目は黒曜石のような色をしていた。
「あれ? 新しい子? あは、かぁわいぃ」
そう言って急に抱きついてくる。
しかも自分より身長が少し高い。
俺は驚きとショックで完璧に固まっていた。
「こらこら、虚空。その癖なんとかしろって言ったろ
? ほら、固まっちまってる」
名残の静止によって虚空(コクウ)と呼ばれる少女は俺を離した。
「社長のケチィ……。で、この子は?」
「あぁ、コイツは新しい俺らの仲間、アーンド家族。名前は獅堂 雨月だ」
俺を指差しながら名残がそう紹介する。
てかコイツ、本当に社長だったんだ。
言ってしまえば、社長なんて嘘だと思ってた。
だって、見た目的に駄目じゃね? この人。
なんて、俺は思っているが口には出さない。
「雨月ね。私は雪原 虚空(ユキハラ コクウ)っていうの。歳はー……同じくらいだよね? よろしく」
握手を交わした。
「さて、この万屋にはまだまだ仲間がいる、が。各自仕事にいっているため、この本部には主に俺達三人しかいない。まぁ、そのうち会えるさ」
そう言って名残は社長席から立ち上がった。
「時間は午後五時、夕飯の買出しに行くぞー!!」
名残が拳を上げれば、甘露達もそれに合わせて掛け声を上げる。
なんだか、大人なようで、大人じゃない人達だ。
それに、誰一人、俺の素性を聞き出そうとしない。
こんな素性も何もかも不明な俺を優しく受け入れてくれた。
馬鹿なのか、お人好しなのか、分からないが一つ分かるのは、
全員お互いを信頼し合っている事。
目を見れば分かった。
完全に警戒を解いた、優しげな瞳。
それを見るだけで泣きそうになる。
いつの間に俺は、こんなに泣き虫になってしまったのだろう。
三年。
決してそこまで長いとは言えない時間。
1905日間——
その間に俺はここまで弱っていたのか。
友人も誰もいない空間、
笑い声も何もない空間、
俺は、
こんなにも人を必要としていた。
「雨月ー? おいてくよぉ」
既に部屋の入り口で待機している三人。
「……今行く」
俺はそう呟いて三人のもとへ足を速めた。
「お前、これでも着とけ」
そう言って甘露から渡されたのは少し丈の長いコート。
「これ着とけば、手錠と鎖、見えねぇだろ」
ぶっきら棒に投げ渡されたコートは彼の不器用な優しさの表れ。
「サンキュ」
俺はコートを羽織り、部屋を後にした。
*
紅いリボンが風で舞う。
亜麻色の短い髪、紺碧の瞳が一人の人物を捕らえる。
「ねぇ、プーチン……。戦争機械は生きてるって、ホント?」
まだ幼さが残る声。
少女は自分より遥かに高い身長の男を見上げ問う。
「あぁ、政府からの情報だ。間違いはないだろう」
答えるのは白髪の男。
歳はまだ若く見える。
眼帯によって隠された左目、赤い右目は空を見つめた。
「戦争機械、第三次世界大戦……。全て、暴いてみせる」
男の決意に満ちた声が、
空へと消えていった——