ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 死体愛好者と正しい死に方 ( No.25 )
- 日時: 2010/07/11 12:11
- 名前: 月兎 (ID: iEydDqYB)
第七話「偽り」
—僕は嘘をついてきた。
なにもかも偽ってきた、きっと僕の心臓も記憶もすべて「ニセモノ」なのだ。
そう、今の自分はきっと自分じゃない誰か—
「みーくん、私はコッチやるからソッチやって。みーくんが寝てるせいで遅れてるんだからパッパと終わらせて帰らなきゃ」
図書室に着くなり彼女はそういって僕に指示を出す。
ソッチと指差されたほうに向かって…
僕だってこんなところに長居したらどうなるか分からない、きっと吐いたりするんだろうか、あれ?
そういえばどうして僕は二人きりがトラウマなのだろう?
なぜだか「女」と二人きりになると体が拒絶し始める。
体が嫌ってるのだ、二人きりの空間を…
吐いてみろ、そうしたら僕は嫌われる。
吐いてみろ、そうしたら僕は殺される。
吐いてみろ、そうしたら僕は…
僕は…?
「っ」
必死に自分を隠して、腰を丸めてヨロヨロと新聞の並べられた本棚に向かう。
—ぼくにとってこれが、資料整理という仕事が忘れていた記憶を取り戻すきっかけになるなんてこのとき知る由もなくて…—
後少し、後少し、無造作に落とした新聞の山。
目に入ったいつかの大記事。
それには、どこかでトラウマを作った、そんな…
少年Aがいた。
「12月9日…」
それは冬の寒い日、雪が積もっていた、その雪が真っ赤に染まる。
「みーくん!見…て、…みーくん?」
一枚の新聞を掲げながら走ってくる彼女。
僕は尋常じゃないほどの汗を流して、口を必死に押さえて、新聞から目を離そうとして、目を彼女に向けた。
「ひっ」
考えられないほど高い声が口から漏れ出した。
「彼女」はもういないのに、彼女が…現乃 帝という少女がなぜか、あの「彼女」に見えて。
「あ、あ…」
駄目だ、駄目だ、駄目だ…動くな口!
駄目だ、動くな眼!
体が言うことを利かない、駄目なのに…違うのに、喉から血が出るほどに僕は叫んでいた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」