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Re: 死体愛好者と正しい死に方 ( No.38 )
日時: 2010/07/26 16:11
名前: 月兎 (ID: QuEgfe7r)

第九話「朝日と」

—もう二度と話しかけてはくれないんだ。
二度と僕の前で笑いかけてはくれないんだ。
そう思うと急に涙があふれ出す…
親友を殺したのは僕なのに、ずっと忘れてたのに—

「朝日、朝日」
僕は何度もその言葉を繰り返した。
「彼」との思いでが、「親友」との出会いが、そして
「森 朝日」との最後が。

「みーくん、泣いてる…」
そんな彼女の言葉で顔を上げると服には涙のシミが残っていて、久しぶりに味わった涙の感触。

顔を伝った雫は服にこぼれ、雫の伝った顔には何とも言えない感触が残って、眼は充血して漏れだす声は震えだして…

「そ、んな…こと」
僕が泣いたのはあの時以来だ。

あのとき?

今は思いだせる、そう…親友が死んだ。

あのときだ。

「みーくん」
そういえば何故彼女は親しみのない僕をそんな呼び方するんだろう。

ずっとずっと考えてた。

「みーくん」なんてそんな呼び方をしてたのは

朝日しかいない。

朝日は僕のことを最初「みーくん」と呼んでいた。
誰の前でもそうで、僕は少しだけど恥ずかしかった。だから、朝日にいったんだ。

『僕のこと美月でいいよ』

本当は少し子供っぽい「みーくん」てあだ名が嫌で言ったけれど、そのことは言わなかった。

すると朝日は

『なんだ、いいならもっと早く言えって!』
待ってたかのように、満面の笑みでそう言ってくれた。

その後聞くと、最初僕達が出会ったとき朝日は

『なんて呼べばいい?あだ名は?』
そう聞いたんだとか。

もちろんそんなものない僕はなんでもいい、と答えたのだがそれで朝日がぼくにつけたあだ名が

『みーくん』
だったんだ。

それもこれも朝日はあだ名っていうのは名前ではない他の呼び方のことだから「美月」っていうのはあだ名とは違う。
そんな考えでつけたんだ。

朝日はそんな奴だった。