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Re: 死体愛好者と正しい死に方 ( No.51 )
日時: 2010/07/29 19:36
名前: 月兎 (ID: QuEgfe7r)

第十一話「彼女と」

—知らなかった、それは『親友』に知らされなかったからだ。
僕は、知りたかった…『親友』のすべてを、『罪』を。
でも、知らなかった、知らなかった、『彼女』だけはしってたけれど—

「好きだったから、知ってるんだよ?」
それは話が噛み合ってないともいえる一言で、美月の頭の上には「?」が浮かぶ。

「朝日は私のことを好きだった、私も朝日のことが好きだった、だから知ってるの」

「えっ」

それは僕の知っている真実とは違っていた。
朝日が死んだのは、現乃 帝…君のためで、朝日が僕を置いて旅立って行ってしまったのは大好きな『彼女』のためだった。

だって、朝日は最期に僕にこういったんだ。

『ありがとう!じゃあ俺いってくる』

これは、告白しようと思っていた朝日に相談されて…僕が朝日に頑張れよ!って背中をおして…あれ?
僕はずっとそれをドアの向こうで見てて、朝日は確かに眼の前にいる『彼女』に告白してた。

「でも、そんな、なんで、あれ?」
戸惑っている僕を見て彼女は言う。

「朝日は話してなかったんだね、やっぱり…みーくんが親友だから」
彼女の言っていることが分からない、僕と朝日のことなのに、むず痒い…心がモヤモヤするのが分かる。

「朝日が言った【告白】は二度目の告白なんだよ」

二度目。

ああ、そうか、朝日は僕には言っていないところで…すでに大好きな『彼女』に告白してたのか、でもどうして?
僕に言ってくれなかったことは、この際いいや。
沸々と怒りが、哀しみがこみ上げてくるのだけれど…

どうして二度も告白する必要があるんだろう。

「じゃあ…一度目の告白ですでに朝日と…君、現乃は恋人どおしだったってことになって…でもなんで二回も告白する必要が…」

頭でグルグル回った言葉を口にする。

「あったの、それは私が狂ってたから。だから朝日は死んじゃったの…最初で最後、人間の死を哀しいと思うことができる…」

「人間らしい私を創ってくれた」

ああ、ああ、ああ?

そうだ、思い出せ、二度目の告白を。

朝日の最期を—






『ありがとう』