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Re: 死体愛好者と正しい死に方 ( No.69 )
日時: 2010/08/11 10:28
名前: 月兎 (ID: QuEgfe7r)

第十四話「あの場所で」

—朝日は愛されなかった、でも愛していた、人間を。そこが僕とは違った。
僕は愛されなかった、でも別にそれでも良かった。
だって僕が愛されないような人間だったのが悪かっただけだから。
朝日は愛される人間だったし、死ぬ理由もなかったのに—

『さようなら』

それが一つ目—

『ありがとう』

それが二つ目—

『愛してください』

それが…三つ目—



朝日はカッターを、手首に近付けて—


朝日はカッターを、頸動脈にあてて—


朝日はカッターに、力を入れて—


朝日の手首から、血が噴き出して—


朝日の顔が、苦痛にゆがんで—


朝日がゆっくりと、ゆっくりと倒れていって—


それから、それから、それから…


そこまで頭の中で回想されて僕は、口をおおって俯く。
ああああああああああああああああああああ、駄目だよ、なんで、朝日が、クソッ、なんで…


「ごめん、ごめん、ごめんみーくん、ごめん…私があの時止めてれば…」
そうだ、なんで彼女は止めなかった?

「あの日」
なんで…彼女が、彼女が殺した?

「あの時」
朝日が死ななければいけない理由は?

「あの場所で」
分からない、分からない…



「なんで朝日は…死んだんだよっ!!」
死にたいな—




—代わりに僕が死ねばよかったのに—

—朝日は必要な人間だ、なんで彼が?—

—彼が死んで、僕はなんで生きてる?—

—死にたがりのくせに!!—