ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 1 サーカスなんて、パレードなんて ( No.1 )
- 日時: 2010/06/14 20:58
- 名前: 真飛 ◆v9jt8.IUtE (ID: SG7XrUxP)
一 きらきら、光るの?
只今五時半。寝そべって暇になる私。気がつくとサーカスのことを考えていた。
近々この町に、サーカス団とやらが来て、プライドだかパレードだかのお祭りをする、と聞いた。
人ごみ嫌い、馬鹿騒ぎ嫌いな私にとってはこれ以上の迷惑はない。
聞いたところでは音声マイクを使って周りの人に声を掛けると言う。相当大きい声なんだろう。家の中に居ても聞こえる、とマミーが言っていた。
サーカス、と言う変な響きには興味があるが、人ごみの中に入るぐらいなら家で本を読む方がいい。
だが、只今危険な状態なのだ。パレードとやらに行きたくないと言うのに、暇つぶしをする本がない。
後二日間したらサーカス団が来るらしい。本を買う時間は沢山あると言うのに、本を買うお金が無い。全財産十ペンス。これでは二ポンドの本が買えやしない。
今からお手伝いを頑張っても、多くて一ポンド五十ペンスくらいだ。
全く、何でイギリスにサーカス団とやらが来るのか理解できない。どうせなら、アメリカとか、そこら辺に行けばいいものを。
一生使い果たしてもいいから、イギリス周辺にだけはサーカス団と言うものが来ないで欲しい。あるいは、サーカスとか、パレードとか、消え去って欲しい。
「……マミー、二ポンド持ってる?」
自分の部屋を出て、階段を下りながら、晩御飯の準備をしている栗色の髪のマミーに言う。
どうせ、「本はダメよ」とか、「お手伝いしたら」とか言う皮肉を込めた口調で言うに決まってる。と思えば。
「ああ、持ってるわよ? どうせパレードに行きたくないんでしょ? ほら、これで本を買ってきなさい」
マミーは人差し指と中指の間に周囲は金色、中部分は銀色に光る二ポンド硬貨をひらひらとさせてから言う。
いつもとは違う発言。きっとマミーも人ごみが嫌いだから分かってくれたのだろう。さすがマミー。
だが、明日になれば「早く二ポンド返しなさい!」と怒られそうな気がしたので、マミーから二ポンドを取って、「ありがと」と言った後に、茶色の汚れた靴を履き、走って本屋に向かうことにした。
その後にでも、サデュラさん家にでも行ってお手伝いしてこようか。運が良ければ二ポンド以上貰えるはずだ。