ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

3 自分さがすよ、みつからないよ ( No.6 )
日時: 2010/06/14 20:59
名前: 真飛 ◆v9jt8.IUtE (ID: SG7XrUxP)

 走る、走る。さっきの出来事を忘れたくて、思いっきり走る。息切れしても、ずっとずっと。

 ここまで来れば、きっと居ないだろう、と思ってたのに。この男は……。
 「さっきはごめん。別に、無理に来いとは言わないけど、これ、貰っておいて」
思いっきり頭を下げたかと思いきや、私の手をとって包んだら、思いっきり握りしめる。少し痛いが、反省はしているようだ。これで許さなければ私はなんなのだろう。
許す気になったけど、許そうと思えない。許せないんじゃない。許せるけど、自分の奥で何かがつっかかっている。
 私は無言で男の顔から顔を逸らす。「ありがとう」さえも言えない。よく、分からない。自分なのに、自分のことが。 
 
 「サデュラさーん、居る?」
「あれ、メイちゃん? 今日もお手伝いかい? たまには休んでもいいのに」
私の声に気付いたように、サデュラさんは自分の白い家の窓から顔を出して言う。
「あー、二日後には休むんで今日やらないと」
「二日後って……サーカスかい?」
 サデュラさんは、勘が良い。
 いや、二日後って言ったらサーカスって言うことは町民の誰もが知っていることだ。
 けど、確か八歳の頃に私がホットケーキ作りを手伝っていたら、「浮かない顔して。どうしたの?」と訊かれた。その時私は確かに虐められていたが、愛想笑いくらいはしてたはずだ。お客様に心配させるなど、と言うマミーの商売のおかげで。
別にいっか、と思った私は全てをサデュラさんに話すと、「一人で胸を張って、一人で笑いなさい」と言われた。初めて人に相談した。
マミーよりも頼りになる、そんなサデュラさん。
 「ま、チケット貰っちゃったし。で、何か手伝うことは……」
「そうね……丁度裏庭掃除とかどうかしら」
サデュラさんは、少し考えてから言う。私は一応「はい」と返事をした後にサデュラさん家の玄関に向かう。
そして、しばらくするとサデュラさんが玄関を開けてお出迎えをしてくれる。
 私はサデュラさんに案内されて、裏庭に出た。
 「時間、かかると思うけれどよろしくね」
と、サデュラさんは笑顔で言う。これは凄い。綺麗とか汚いとかそんなものじゃない。物凄い。ここは魔物かなんか住むのだろうかってほどに凄い。
——だって、極端に汚いんだもん。