ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ━Solitary killer━6話うp ( No.18 )
日時: 2010/06/19 15:38
名前: 律零 (ID: EWcIN/Ij)

【交渉】

施設に戻った灰些は、廊下を歩いて自分の部屋に戻る。
「あっ!灰些、どこ行ってたの?」
灰些の部屋にはなぜか玲奈がいる。
「なんで俺の部屋にいるの?」
「え?灰些探してたんだよ。食堂にも広場にいなかったから。」
玲奈の言葉に灰些は納得する。
しかし、いつまで自分が殺し屋だという真実を隠せばいいのだろうか・・・
灰些はため息交じりに時計を見る。

午前10時21分

まだまだ1日は長い。遠征メンバーはもう発表されているだろう。
「どうしたの?てかさ、どこ行ってたの?」
「散歩だよ。・・・まだ行くところあるから」
灰些はそう言うと、あることを思い出して部屋を飛び指した。
後ろから玲奈が呼びとめる声が聞こえるが、ここは無視することを優先する。
そして、施設のある場所へと向かって走って行った。

─────

施設の最奥 室長室

施設を管理する室長、桃山邦江はデスクでコーヒーを飲みながら孤児の資料を片付けていた。
「桃山先生!!」
ドアが派手に開き、息を切らした灰些が入ってきた。
腰まである青色の髪を靡かせながら、まだ29歳の室長邦江は灰些を見て驚く。
「どうしたのですか?そんなに慌てて。」
邦江はおっとりとした口調で話しかけ灰些を見つめる。
「勝手ですがお願いがあります。」

「学校を1週間休ませてください!!!」

灰些は土下座をしながら邦江に無理な交渉をする。
邦江はキョトンとした表情で灰些を見ると、首を横に振る。
「それは、行けません。施設にいる以上、あなたはここのルールを守らないといけない。あなただけ特別扱いするのは無理です。」
邦江は灰些に近づくと、頭を優しく撫でた。
「・・・・でも、そんな頼み方するのは君らしくないです。何かあったのですか?」
灰些はその時、肝心なことを思い出した。

理由をどう説明すればいい?

「殺し屋の遠征任務にいきまーす」なんて言ったら大変なことになる。
灰些は頭を上げ、純粋な目をした邦江の優しい表情を見る。
こんな人に嘘はつけない。
灰些が困っているその時だった。

「失礼します。」

ドアが開き、殺し屋の先輩である大沢鈴愛が入ってきた。
鈴愛は邦江に礼をすると、邦江は笑顔で鈴愛と握手をする。
「久しぶりですね!!どうですか?」
「私はいつでも元気ですよ。会社でもうまくやってますし・・・」
邦江は灰些を見ると、灰些も知っている鈴愛を紹介された。
「この人はこの施設出身の鈴愛さん。隣に建ってる保険会社で働いているのよ。」
なるほど・・・。この時、邦江が鈴愛が殺し屋であることを知らないのが分かった。
「失礼ですが、邦江室長。その子と少しお話しても?」
「え?構いませんよ。」
鈴愛は灰些の腕を掴み、一旦室長室から出た。


鈴愛はある程度室長室から離れた廊下の隅に灰些を連れてきた。
「な、なんですか?」
「遠征メンバーが決まったわ。」
鈴愛の言葉に、灰些は呆れてため息をつく。
「はいはい・・・僕は含まれていないし意味がな・・・」

「あなたも遠征メンバーよ。」



「え?」



灰些の動きが止まる。自分が遠征メンバーに選ばれた?
灰些は嬉しさの前に疑問が浮かんだ。
「なんで俺が・・・」
「さあね。失地さんはあなたに青葉、流沙や私も選んだ。総勢10名で関西に行くことになったわ。」
「え、ちょ、学校あるんですよ!!」
「それを交渉するために来たのよ。あなたは支度しなさい。明日には向かう予定なんだから。」
鈴愛はそう言うと、足早に室長室へと戻っていく。
灰些は未だに呆然とし、現実を受け止めることができなかった。