ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- どっかのおはなし ( No.6 )
- 日時: 2010/06/23 19:39
- 名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
#0,15 - ぐるぐるまわるの 〜ハジマリ編〜
ぽたっ。小気味良い音を立てて滴り落ちたソレを見ながら、彼は大きくため息をついた。
どうして自分は、と。ひたすらに自己嫌悪にさいなまれていく彼に、隣にたった小さな影が言った。
「悪くない。……さくは、悪くないよ」
哀しげに響く声に、彼は答えた。小さく、息を呑む音を立ててから。
「……ごめん、美咲。俺、やっぱり駄目だ」
「駄目じゃないよ。さくは、駄目じゃない」
がたがたと震えながら小さな影——美咲と呼ばれた——は彼——さくと呼ばれた——に返してから、さくの脚にしがみついた。
無論人間の姿をしているのだが、体の震えを必死に押さえ込もうとしながら脚に抱きつくその姿は小動物のようだ。
さくはそんな美咲の頭を撫でてから、もう一度大きくため息をついた。
「——俺さぁ、いつからこんなのになったんだっけ?」
「……? さくは、いつもさくだよ?」
そして吐き出した言葉に、即座に美咲の震える小さな声が返ってくる。
「いや、そうじゃなくて……」とさくは美咲に言いかけたが、すぐに言葉を切った。
もう一度、しかし今度は先程よりも力強く美咲の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「もういいよ。美咲は、寝てて」
「えー? さくは?」
「俺は後始末するからさ」
しばしむぅ、と膨れていた美咲だが、さくがにっこりと微笑んだのを見ると、さくの脚から離れた。
少々不機嫌なようで、頬を膨らませている。そんな美咲から、明らかに不機嫌な声が飛ぶ。
「……すぐに帰ってきてね」
「わかってるよ」
さくは再度、美咲の頭を荒っぽく撫でた。
**
「にゃははー」
そんな猫のような笑い声を上げながら、彼女は手首を握り締めた。
ぎりぎり、ぎりぎり、ぎりぎり——。今にも骨が折れそうなほど、強く強く。
「なっちゃーん? どしたの?」
ふと、右手首に掛けられる左手の力が弱められる。彼女は右肩と耳で挟んでいる携帯に向かって、声を掛け続ける。
右手首には、くっきりと手形が残っている。
「もしもーし、応答願いますたいちょお! たいちょおーっ!」
言葉こそは馬鹿らしいが、彼女は不安げな表情を浮かべており、かなり心配しているようだ。
なっちゃん! と大きく声を張り上げた後、彼女はいつもと違うことに気付く。
「……れーくんの鳴き声がしない」
彼女はぽつりと呟く。れーくん、というのは彼女が携帯で話していたなっちゃんと呼ばれた少女のペットの猫である。
なっちゃんとれーくんはとても仲が良いらしく、携帯で話す時は大体れーくんを抱えているようで鳴き声が絶えない。
その、はずなのだ。けれども今日は、一度もれーくんの鳴き声を聞いていない。
「——なっちゃんッ!?」
なにかあったのか。そう考えるも、あまり向こうではガタガタとした騒がしい音はしていないようだ。
それからやく、数十秒後。
甲高い少女の悲痛に満ちた叫び声が、彼女の携帯から響き渡った。
#0,15 END
美咲(みさ) !「みさき」じゃないよ!
※れっとが勝手に作った名前。
口の中が血の味でいっぱいの烈人です、どうもこんばんは。ティッシュ口の中につめてます^p^
矯正からはみ出した針金が突き刺さってたんですよ、先週から。まさか血出るとは思いませんでしたけどww
1,5話ってことで。間話(と書いて「かんわ」と読む←)みたいな。
ごめんなさい誤字ってました。「みっちゃん」じゃなくて「なっちゃん」ですすみません。