ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: デスゲーム 参照100突破!ありがとうございます! ( No.16 )
日時: 2010/07/16 16:53
名前: ガイ (ID: HQL6T6.Y)

第7話

 柊斗の姿を見て、鬼も足をとめた。その間約10m。そんな中でも表情は変わらない。それから数十秒、視線での戦いが続いた。しかしついにその沈黙が破られる時が来た。
 最初に動いたのは柊斗だった。一瞬で鬼の目の前まで来ると、急所である顎に渾身のアッパーを繰り出した。しかし鬼はそれを難なく避ける。今度は鬼の番だ。右手に持っている警棒で柊斗に襲いかかった。警棒は柊斗の頬をかすめ、そのままコンクリートの壁にぶつかった。その瞬間、バチバチと雷鳴のような音と共に、壁が崩れ落ちた。どうやら警棒には強力な電気が流れているらしい。また予想通り、鬼はとてつもないパワーを持っている。

「やってくれるな」

 頬にできた傷から流れ出す鮮血を下でぺロリと舐め、にやりと笑う柊斗。彼は何故か勝負を楽しんでいるかのようにみえた。鬼は壁から警棒を引き抜くと、柊斗の方向へ向き直った。
 先に鬼が動き出した。今度は警棒ではなく拳を繰り出してきた。予想してなかった柊斗は反応が遅れた。
 しまった———!強烈な左ストレートが彼の顔を捉える。拳はそのまま振りぬかれ、柊斗は吹っ飛ばされた。立ち上がろうとしてもあまりの痛みに体がふらつき、視界がぼやける。
 そんな柊斗を容赦なく鬼は攻撃を仕掛けた。ゆっくり歩み寄ると警棒を天井まで高く振り上げ、思い切り振り下ろす。しかし柊斗はその瞬間を待っていた。最後の力を振り絞り、攻撃をかわした。

「お前の弱点はその強すぎるパワーにある。思い切り振り下ろすのはいいが、その後のお前の体がフリーだぜ?」

 柊斗は先程からこの瞬間を待っていた。鬼の弱点に気づいており、計画を練っていたのだ。右手に渾身の力を込めると、大地が震えるような雄たけびを上げ、鬼の腹に拳をめり込ませた。鬼の体がくの字に折れたかと思うと、そのままコンクリートにぶつかりやがて動かなくなった。
 柊斗はその光景を黙ってみていた。まだ多少ふらつくが少しはめまいはおさまった。彼は足を引きずるようにして、その場を去った。
 数十秒後、鬼が起き上ったのも知らずに。