ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: デスゲーム ( No.17 )
日時: 2010/07/17 19:27
名前: ガイ (ID: HQL6T6.Y)

第8話

「もういや……」
 迷路のような通路を一人歩きながら、千帆は不満を漏らした。
 あの二人と別れからというもの、ろくな目に会ってない。まず男の人の死体を見た。吐き気がした。もしかしてあんな風になるのかなと思ったら、急に怖くなった。
 鬼も見た。とっさに身を隠し、そのまましばらくは動けなかった。
 もうこんな思いをしたくない。早く柊斗達に会いたい!
 その時だった。
 通路の向こうから足音が聞こえてきた。
 ……鬼?
 彼女は息が聞こえないように必死に口を手で隠した。

 こっちに来ないで!こっちに来ないで!

 しかし神は彼女に味方しなかった。足音がどんどん近付いてくる。
 
 嫌!嫌!嫌———っ!

「千帆!千帆じゃんか!」

 鬼が喋った?いや、この声は聞いたことある。
 現れた人物は鬼ではなく翔であった。千帆の体から力が抜け、へなへなと床に座りこむ。顔見知りに会い、ふっと緊張を緩めた彼女は涙腺が緩んだ。涙が眼から溢れだす。

「翔!怖かったよ。でもよかった生きてて」
「おいおい、泣くなよ、俺なら大丈夫だ。で、柊斗は見てないか?」
「うん。鬼なら何度か見たけど……」

 今にも消えてしまいそうな声で呟く。

「そうか、心配だな。無事だといいが……」
「きっと大丈夫よ」

 さっきとは違い、明るい声を出した千帆に翔は大きく頷いた。

「行こう」

 二人は立ち上がり、屋上目指して走り出した。